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「ヤングケアラー支援プラン」とは?福祉・介護・医療・就労・教育の5分野で進む、令和8年度以降の支援

「ヤングケアラー支援プラン」とは?福祉・介護・医療・就労・教育の5分野で進む、令和8年度以降の支援

ヤングケアラー支援プランのポイント

こども家庭庁、厚生労働省、文部科学省の実務者による「ヤングケアラーの支援に向けた福祉・介護・医療・就労・教育の連携プロジェクトチーム」は、令和8年7月23日付で「ヤングケアラー支援プラン」を決定しました。(ヤングケアラー支援プラン(令和8年7月23 日版)-p.1
このプランは、令和8年度から令和10年度までの3年間程度を対象に、ヤングケアラーとその家族を切れ目なく支援するための施策の方向性をまとめたものです。(ヤングケアラー支援プラン(令和8年7月23 日版)-p.1
従来の「福祉・介護・医療・教育」の連携に、新たに「就労」を加えた5分野で取り組む点が大きな特徴です。早期把握や相談支援だけでなく、家庭全体への支援、進学・就職、就労継続、心理支援まで、長期的な視点で支援する方向性が示されています。(ヤングケアラー支援プラン(令和8年7月23 日版)-p.2

ヤングケアラーとは

子ども・若者育成支援推進法では、ヤングケアラーを次のように定めています。
家族の介護その他の日常生活上の世話を過度に行っていると認められる子ども・若者
ここでいうケアには、家族の介護や家事、看病、きょうだいの世話のほか、外国ルーツの家庭での通訳や行政手続きの補助などが含まれる場合があります。(ヤングケアラー支援プラン(令和8年7月23 日版)-p.1
ただし、元資料では「過度な世話」について、何時間以上なら該当するといった一律の基準は示されていません。ケアの内容や頻度だけでなく、本人の生活、学業、進路、就労、心身への影響などを踏まえ、支援の必要性を個別に考えることが重要です。
また、ヤングケアラー支援の対象は18歳未満のこどもに限られません。おおむね30歳未満を中心に、状況に応じて40歳未満の人も対象となり得るとされています。(ヤングケアラー支援プラン(令和8年7月23 日版)-p.12
ただし、これはすべての制度やサービスが一律に40歳未満まで利用できるという意味ではありません。実際に利用できる支援や相談窓口、年齢要件は、制度や自治体によって異なります。

なぜ新たな支援プランが必要なのか

これまで国や地方公共団体では、ヤングケアラーの実態調査、相談支援、学習支援、支援体制の整備などが進められてきました。(ヤングケアラー支援プラン(令和8年7月23 日版)-p.1
一方で、取り組みが進むにつれて、早期把握や教育・福祉の連携だけでは対応しにくい課題も明らかになっています。たとえば、次のような課題です。
  • 家族のケアによって、進学や就職の選択肢が限られる
  • 就職後もケアと仕事の両立が難しい
  • ケアの影響が、その後のキャリア形成に及ぶ
  • 進学や就職などの移行期に支援が途切れる
  • 本人がケアを「当たり前」と捉え、困りごととして認識できない
  • 家族への責任感や罪悪感から、支援を求めにくい
  • 家庭の事情を周囲に知られたくないと感じる
そこで本プランでは、本人を早期に把握して支援につなぐだけでなく、家庭全体への支援や、若者期の進学・就労支援まで含めた取り組みの方向性が示されています。(ヤングケアラー支援プラン(令和8年7月23 日版)-p.2

4つの重点施策

本プランの重点施策は、次の4つです。
  1. 早期把握・多機関連携
  2. 家庭まるごと支援
  3. 支援策の推進
  4. 社会的認知度・理解の促進

1. 早期把握・多機関連携

ヤングケアラーの問題は表面化しにくいため、本人や家族に関わる周囲の大人が気づくことが重要です。対象となる関係者として、学校、医療機関、福祉事業者、民生委員・児童委員、こども食堂などの地域・民間団体が挙げられています。(ヤングケアラー支援プラン(令和8年7月23 日版)-p.3ヤングケアラー支援プラン(令和8年7月23 日版)-p.4
特に、次のような取り組みが重要とされています。

相談しやすい関係をつくる

本人が必ずしも支援を望んでいるとは限りません。家族への思いや、家庭の事情を知られたくない気持ちから、支援に消極的になる場合もあります。
そのため、「困っているはず」と決めつけるのではなく、本人や家族の気持ち、価値観、ペースを尊重しながら関係を築くことが必要です。(ヤングケアラー支援プラン(令和8年7月23 日版)-p.2

情報連携の方法を明確にする

ヤングケアラーを把握した後、支援につなげるためには、地域ごとに次の事項を明確にすることが求められています。(ヤングケアラー支援プラン(令和8年7月23 日版)-p.2
  • いつ、どこに相談・連絡するのか
  • 自治体のどの部署が情報を集約するのか
  • 関係機関の間でどのように情報を共有するのか
  • 個人情報をどのように取り扱うのか
本プランでは、地方公共団体のヤングケアラー担当部署への情報連携を促進し、必要な支援へのつなぎを進める方向性が示されています。(ヤングケアラー支援プラン(令和8年7月23 日版)-p.2
情報共有の方法や本人・保護者への説明、同意の要否は、情報の内容や支援の状況、関係機関、自治体の運用によって異なります。実際に連携する際は、地域の手順や個人情報保護に関するルールを確認する必要があります。

実態調査を支援につなげる

地方公共団体による実態調査については、支援につなげるため、個人を把握できる任意の記名式などの方法が重要とされています。また、少なくとも年1回程度、定期的に実施することが望ましいとされています。(ヤングケアラー支援プラン(令和8年7月23 日版)-p.5
令和6年度には、400以上の地方公共団体が実態調査を実施しました。一方、個人を把握できる方法で調査を実施した自治体は約4割にとどまっています。(ヤングケアラー支援プラン(令和8年7月23 日版)-p.5
今後は、多言語対応や、外国ルーツのこども・若者も回答しやすい調査票の作成など、調査方法の工夫を進める方向性が示されています。(ヤングケアラー支援プラン(令和8年7月23 日版)-p.5

2. 家庭まるごと支援

ヤングケアラーの問題は、家族が抱える複数の課題が重なり、複合化しやすい特徴があります。本人に直接支援を行っても、ケアを必要とする家族への支援がなければ、本人の負担が残る場合があります。そのため本プランでは、ヤングケアラー本人だけでなく、家庭全体を支援対象として捉える考え方が示されています。(ヤングケアラー支援プラン(令和8年7月23 日版)-p.6

支援を受け入れにくい家庭との信頼関係

家事支援やヘルパー事業は、本人が担うケアの負担を減らす可能性があります。しかし、支援を受けることや、家庭に他人が入ることに抵抗を感じる本人・家族もいます。
こうした場合には、支援の導入を急ぐのではなく、本人や家族の背景を理解し、気持ちやペースを尊重しながら関係を築くことが重要です。
施策例として、次のような取り組みが挙げられています。(ヤングケアラー支援プラン(令和8年7月23 日版)-p.6
  • 食事の配送など、支援につながるきっかけづくり
  • 支援を受け入れにくい家庭との関係構築
  • 円滑な支援開始に向けた好事例の収集・展開
  • 当事者や家族の声を把握する取り組み

家族の意思決定に本人の声を反映する

ヤングケアラーは、家庭内で意見を言いにくかったり、自分の思いが家族の意思決定に反映されにくかったりする場合があります。
そのため、福祉サービスの利用や個別の支援計画を作成する際には、家族の意向として、こども・若者本人の声も把握することが重要です。(ヤングケアラー支援プラン(令和8年7月23 日版)-p.7
家庭全体を支援する場合でも、本人の意見が大人の意向に埋もれないようにする必要があります。また、ケアを担う大人自身が相談したり、悩みを共有したりできる場を充実させることも、結果として本人の負担軽減につながるとされています。(ヤングケアラー支援プラン(令和8年7月23 日版)-p.7

3. 支援策の推進

「支援策の推進」では、ケアを必要とする家族への支援、本人への情報提供、相談・心理支援、居場所、学習・体験支援、若者世代への支援などが示されています。(ヤングケアラー支援プラン(令和8年7月23 日版)-p.7

ケアを必要とする家族への支援

ヤングケアラーが自分の時間を持つためには、ケアを必要とする家族への社会的な支援が欠かせません。
活用が想定されている制度・事業には、次のようなものがあります。(ヤングケアラー支援プラン(令和8年7月23 日版)-p.8
  • 介護保険サービス
  • 障害福祉サービス
  • 子育て世帯訪問支援事業
  • 各種ヘルパー事業
  • ケアを必要とする家族が家庭以外で過ごすための居場所
これらを活用して、本人が担っているケアを社会的なサービスで支え、ヤングケアラーが自分の時間を持てる環境を整えることが重要です。
ただし、これらはヤングケアラー専用の全国一律サービスではありません。利用条件、手続き、費用などは制度や自治体によって異なり、家族の状態に応じて複数の制度を組み合わせる場合があります。
また、ケアを必要とする家族の年齢や心身の状態が変化すると、利用できる制度やサービスが切り替わることがあります。特に、家族が18歳になるなどの移行期には、家庭内のケア負担が急激に変化しないよう配慮することが求められています。(ヤングケアラー支援プラン(令和8年7月23 日版)-p.8

外国ルーツの家庭への支援

日本語を母語としない家庭では、こども・若者が次のような役割を担うことがあります。(ヤングケアラー支援プラン(令和8年7月23 日版)-p.8
  • 医療機関を受診する際の通訳
  • 行政手続きの補助
  • 書類の作成
  • 家族への情報伝達
こうした役割が日常的になると、学校を欠席したり、自分の時間を持てなくなったりする可能性があります。また、保護者が進学や進路に関する情報を十分に得られないことで、本人の進路選択に影響する場合もあります。
本プランでは、外国ルーツの家庭が生活、子育て、進学などに必要な情報を得られるよう、多言語での情報発信や翻訳対応を強化する方向性が示されています。(ヤングケアラー支援プラン(令和8年7月23 日版)-p.9
保護者に必要な情報を直接届けることは、こども・若者が通訳役を担う負担の軽減にもつながります。

情報提供、相談・心理支援、居場所

ヤングケアラー本人が自分の状況を理解し、利用可能な支援にアクセスできるよう、情報提供の充実も重要です。提供する情報として、次のようなものが挙げられています。(ヤングケアラー支援プラン(令和8年7月23 日版)-p.10
  • ヤングケアラーに生じやすい悩みや困難
  • 利用できる相談窓口
  • 利用可能な支援制度
  • ケアを必要とする家族の病状や障害特性
  • 家族が利用できる福祉・医療・介護サービス
相談支援では、ピアサポート、オンラインサロン、居場所、ヤングケアラー・コーディネーターによる支援などが想定されています。(ヤングケアラー支援プラン(令和8年7月23 日版)-p.11
また、きょうだい児、祖父母の介護、精神疾患のある家族、外国ルーツの家族の通訳、障害のある家族との意思疎通支援など、ケアの内容や本人の立場に応じた居場所の選択肢を整えることも重要です。(ヤングケアラー支援プラン(令和8年7月23 日版)-p.11
ピアサポートに加え、保健・心理などの専門家から、ヘルスケアやメンタルヘルスケアについて助言を受けられる機会の確保も、今後の方向性として示されています。(ヤングケアラー支援プラン(令和8年7月23 日版)-p.11

学習・体験支援

家族のケアに時間を使うことで、学習や社会体験の機会を得にくくなる場合があります。
本プランでは、生活困窮者支援やこどもの貧困対策、NPOなどによる学習支援を、ヤングケアラーも利用しやすくすることが示されています。(ヤングケアラー支援プラン(令和8年7月23 日版)-p.11
さらに、次のような機会の充実も想定されています。
  • 心身を休めるための居場所
  • 将来を考えるための社会体験
  • こども・若者として必要な体験
  • 民間企業などによる体験機会

18歳以上のヤングケアラーへの支援

18歳以上のヤングケアラーへの支援は、今後の重要な課題です。
元資料が引用する調査では、令和6年度の18歳以上のヤングケアラーに関する相談受付件数が0件だった自治体の割合は、次のとおりでした。(ヤングケアラー支援プラン(令和8年7月23 日版)-p.12
  • 都道府県:50%
  • 政令指定都市:61.5%
  • 中核市:47%
  • 特別区:52.6%
  • 一般市町村:88.5%
相談件数が少ないことは、対象者がいないことを意味するとは限りません。本人が自分を支援対象と認識していなかったり、相談窓口を知らなかったりする可能性もあります。
そのため、今後は次のような取り組みが考えられています。(ヤングケアラー支援プラン(令和8年7月23 日版)-p.12〜14
  • 18歳以上のヤングケアラーの実態やニーズの把握
  • 各地域の支援状況の調査
  • 既存制度における18歳以上の取り扱いの整理
  • 若者世代の相談窓口の整備
  • 学校から若者支援機関への引き継ぎ
  • 進学・就学継続に向けた経済的支援の情報提供
  • 就職・就労継続に向けた個別支援

進学・就学継続への支援

ヤングケアラーは、家族のケアを理由に進学を断念したり、進学を選択肢として考えられなかったりする場合があります。
本プランでは、進学を考え始める時期から在学中まで、ケアの調整や奨学金などの経済的支援に関する情報を提供し、就学継続を支える方向性が示されています。(ヤングケアラー支援プラン(令和8年7月23 日版)-p.13〜14
中学・高校・大学などの学校と、こども家庭センター、子ども・若者総合相談センター、自治体のヤングケアラー担当部署などが連携し、進学や所属の変化をきっかけに支援が途切れないようにすることが重要です。

就職・就労継続への支援

就労面では、次のような課題が想定されています。
  • 勤務地や働き方に制約がある
  • 就職先の選択肢が限られる
  • ケアの影響で社会経験が不足する
  • 就職活動に困難を感じる
  • 就職後もケアと仕事の両立が難しい
本プランでは、ヤングケアラー担当部署や若者支援担当部署と、ハローワーク、地域若者サポートステーションなどの就労支援機関との連携を強化する方向性が示されています。(ヤングケアラー支援プラン(令和8年7月23 日版)-p.14
また、社会福祉法人や民間企業による体験的就労の好事例を収集・展開することも施策例として挙げられています。(ヤングケアラー支援プラン(令和8年7月23 日版)-p.14
これは、ヤングケアラー向けの特別な雇用枠を設けるという意味ではありません。個々の家庭事情を踏まえ、職業相談、就職準備、就労継続を支援するという考え方です。

4. 社会的認知度・理解の促進

令和4年度から令和6年度までの3年間は、ヤングケアラーの認知度向上に向けた集中取組期間とされ、広報や啓発が進められてきました。令和7年度の調査では、「ヤングケアラー」という言葉を「聞いたことがある」と回答した割合は、中学生で約6割、高校生で約8割でした。(ヤングケアラー支援プラン(令和8年7月23 日版)-p.15
一方、「こどもの権利」については、「聞いたことはあるが、よくわからない」という回答が中学生で6割以上、高校生で半数近くを占めています。
言葉の認知度が高まっても、ヤングケアラーの問題が、こども・若者の時間や選択肢、こどもに保障されるべき権利に関わる問題だと理解されなければ、支援にはつながりません。
今後は、次のような理解を社会全体に広げることが重要です。
  • 家族のケアによって、こども・若者の時間や選択肢が制限される場合がある
  • ケアを必要とする家族も支援を受けてよい
  • ヤングケアラー本人が家族を思う気持ちを否定しない
  • 必要なときは周囲の人や専門機関を頼ってよい
  • 本人の意思や尊厳を尊重する必要がある
福祉、教育、介護、医療、生活困窮、児童相談など、幅広い分野の職員研修にヤングケアラー支援を取り入れることも、今後の取り組みとして示されています。(ヤングケアラー支援プラン(令和8年7月23 日版)-p.16
また、ヤングケアラーや元ヤングケアラーの意見を聴き、施策や啓発に反映することも重要です。経験を語ることによる心理的な負担には配慮が必要です。(ヤングケアラー支援プラン(令和8年7月23 日版)-p.17

相談先は自治体や年齢によって異なる

ヤングケアラーに関する相談先は、自治体や本人の年齢、家庭の状況によって異なります。
まずは、次のような窓口への相談が考えられます。
  • 自治体のヤングケアラー担当部署
  • こども家庭センター
  • 学校の先生、スクールソーシャルワーカー、スクールカウンセラー
  • 地域の福祉・介護・医療機関
  • 子ども・若者総合相談センター
  • ハローワークや地域若者サポートステーション
自治体によっては、ヤングケアラー専用窓口を設けていない場合もあります。その場合は、こども家庭センターや若者支援窓口などが相談先になることがあります。
具体的な担当部署名、連絡先、利用条件は、居住地の自治体公式サイトで確認してください。

まとめ

「ヤングケアラー支援プラン」は、令和8年度から令和10年度までの3年間程度を対象に、ヤングケアラーとその家族への支援を強化する方向性を示したものです。(ヤングケアラー支援プラン(令和8年7月23 日版)-p.1
主なポイントは次のとおりです。
  • 福祉・介護・医療・教育に「就労」を加えた5分野で連携する
  • 18歳以上を含む若者世代への支援を進める
  • ヤングケアラー本人だけでなく、家庭全体を支援する
  • 介護・障害・子育てなどの制度で、ケアを必要とする家族を支える
  • 相談、心理支援、居場所、学習・体験支援を充実させる
  • 進学、就職、就労継続、キャリア形成まで見据える
  • 言葉の認知だけでなく、こどもの権利や支援の必要性への理解を広げる
本プランは、本人にケアをやめさせることだけを目的としたものではありません。家族への社会的支援を強化し、本人が家族を思う気持ちを大切にしながら、自分の時間や進路、将来の生き方を選べる環境を整えることが重要です。
今後は、5分野の関係機関が連携し、毎年度1回程度、プロジェクトチームが施策の取組状況を共有してフォローアップを行う予定です。(ヤングケアラー支援プラン(令和8年7月23 日版)-p.17
制度や窓口の整備だけでなく、現場での気づきと適切な支援へのつなぎを実現できるかが、プランの実効性を左右します。

出典

※自治体の相談窓口、制度の利用条件、事業の実施状況は変更される場合があります。相談・利用の際は、最新の自治体公式情報を確認してください。

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