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こども家庭センターを「設置する」から「機能させる」へ――第8回児童虐待防止対策部会で示された自治体支援と人材育成の課題

こども家庭センターを「設置する」から「機能させる」へ――第8回児童虐待防止対策部会で示された自治体支援と人材育成の課題

設置率は85.9%、問われる「設置後」の支援

第8回こども家庭審議会児童虐待防止対策部会が、資料上、2026年6月8日に開かれた。(2026-6-8 こども家庭審議会児童虐待防止対策部会(第8回)-p.1)部会では、こども家庭センターを中核とした市町村の包括的支援体制、児童相談所職員の人材確保・育成・定着、児童福祉法改正への対応について議論された。
事務局の説明によると、こども家庭センターは2026年4月1日時点で1,496市町村に設置され、設置率は85.9%となった。(2026-6-8 こども家庭審議会児童虐待防止対策部会(第8回)-p.2)こども家庭センターは、妊産婦やこども、子育て家庭の相談を受け、母子保健と児童福祉の機能を一体的に担う市町村の支援拠点だ。必要に応じて、家庭支援事業、児童相談所、学校、医療機関、地域の民間団体などにつなぐ役割が期待されている。
一方、設置率が高まった後も、サポートプランの活用、家庭支援事業の整備、関係機関との連携、職員の専門性などには自治体間で差が残る。今回の部会では、「設置したか」だけでなく、「家族に必要な支援が実際に届いているか」が問われた。

市町村の包括的支援体制に残る4つの課題

事務局は、市町村の包括的支援体制について、主に4つの課題を示した。(2026-6-8 こども家庭審議会児童虐待防止対策部会(第8回)-p.4

1. 自治体による相談支援体制の格差

先行する自治体では、こども家庭センター、地域子育て支援拠点、地域子育て相談機関などの役割分担を整理し、地域全体で相談を受け止める体制づくりが進んでいる。
一方で、学校、保育所、医療機関、民間団体などとの連携が十分に進んでいない自治体もある。委員からは、機関ごとの立場や組織文化、理念の違いが、連携を難しくする場合があるとの指摘が出た。
連携を進めるには、単に関係機関をつなぐだけでなく、どの機関が何を担い、どの段階で情報を共有し、どのように引き継ぐのかを具体化する必要がある。

2. 家族と協働する専門的実践の未構築

こども家庭センターでは、特定妊婦や要支援児童のいる家庭などに対し、本人や家族との対話を通じてニーズや強みを把握し、サポートプランを作成することが想定されている。(2026-6-8 こども家庭審議会児童虐待防止対策部会(第8回)-p.3
しかし部会では、本人と十分に相談しないままサポートプランが作成・交付されるケースや、作成率が十分でない状況が課題として挙げられた。サポートプランは、書類を作ること自体が目的ではない。家族が何に困っているのか、どのような状態を目指したいのかを一緒に考え、必要な支援につなげるためのものである。委員からは、支援の実施後もプランを見直し、サービスの提供状況や家庭の変化を確認する必要があるとの意見が出された。

3. 地域資源と支援事業の不足

家庭のニーズを把握しても、利用できるサービスや担い手がなければ、支援は実行できない。部会では、子育て短期支援事業、子育て世帯訪問支援事業、児童育成支援拠点事業、親子関係形成支援事業などについて、自治体によって整備状況に差があることが議論された。(2026-6-8 こども家庭審議会児童虐待防止対策部会(第8回)-p.16)課題は、事業者や施設、人材、財源の不足だけではない。自治体が必要な事業量を十分に見込めていない場合や、制度があっても利用料や定員、交通事情などのために利用できない場合もある。委員からは、同一都道府県内での好事例や事業者情報の共有、複数自治体による共同実施、都道府県による広域調整などを進める必要があるとの意見が出た。

4. 人材育成の体系と支援体制の未整備

こども家庭センターの職員には、相談対応だけでなく、ケースマネジメント、地域資源の開拓、関係機関の調整など、幅広い役割が求められる。
一方で、令和4年の児童福祉法改正後の役割に対応した研修体系は、まだ十分に整理されていないと事務局は説明した。法定研修は要保護児童対策地域協議会の調整担当者研修が中心で、そのほかの育成は自治体に委ねられている。
委員からは、個人の経験や意欲に依存するのではなく、国や都道府県が研修、スーパービジョン、実践モデルを体系的に整備すべきだとの意見が相次いだ。(2026-6-8 こども家庭審議会児童虐待防止対策部会(第8回)-p.26

家族を中心に、関係機関が支える体制へ

今後の方向性として、包括的支援体制の具体的な「絵姿」を示すことが提案された。(2026-6-8 こども家庭審議会児童虐待防止対策部会(第8回)-p.4)委員からは、家族を中心に置き、その周囲にこども家庭センター、学校、保育所、医療機関、障害児支援、社会的養護、民間団体などがつながる「同心円型」の支援体制が示された。この考え方では、こども家庭センターは単なる相談窓口ではない。家族とともに支援方針を考え、関係機関をつなぎ、支援の実施状況を確認するケースマネジメントの中核を担う。
また、貧困、虐待、障害、不登校、家族の介護や失業など、家庭が抱える複合的な課題を分野ごとに切り分けず、一体的に捉えることも重要になる。児童相談所と市町村の関係については、委員から、児童相談所が法的対応や心理・医学的な専門機能を担う一方、市町村は家庭のニーズを把握し、支援につなぎながら継続的に調整するという、それぞれの専門性の違いを整理すべきだとの意見が出された。(2026-6-8 こども家庭審議会児童虐待防止対策部会(第8回)-p.32)これは今後の役割整理に向けた議論であり、今回の部会で新たな役割分担が決定されたわけではない。

「指導」や「監視」ではなく、対話と協働を

支援の姿勢についても、見直しを求める意見が相次いだ。委員からは、虐待が疑われる家庭に対して、注意喚起や一度の助言指導だけで終わる形式的な対応が、支援関係の構築を妨げる可能性があるとの指摘が出た。
重視されたのは、次のような支援の姿勢だ。
  • 家族の話を聴く
  • 気持ちや状況に共感する
  • 家族の強みを確認する
  • 困りごとやニーズを一緒に把握する
  • 必要な支援につなげる
  • 支援の内容を継続的に見直す
支援者にとっての「見守り」が、受け手には「監視」や「評価」と感じられる場合もある。過去に支援機関から十分な支援を受けられなかった人や、自分の情報が一方的に共有されたと感じた人にとっては、相談そのものが負担になる可能性もある。(2026-6-8 こども家庭審議会児童虐待防止対策部会(第8回)-p.6
そのため、情報共有の目的、本人にとってのメリット、本人が支援にどう関われるのかを丁寧に説明することが求められる。家族を支援の対象としてだけでなく、支援をともにつくる主体として位置づけることが重要だ。

小規模自治体に合ったモデルが必要

全国の自治体に支援体制を広げるには、人口規模や地理的条件を踏まえた制度設計も欠かせない。部会では、人口5万人未満の市町村が全国の約7割、人口1万人未満の市町村が3割を超えるとの説明があった。(2026-6-8 こども家庭審議会児童虐待防止対策部会(第8回)-p.23)大都市の先進事例を、そのまま小規模自治体に適用できるとは限らない。
小規模自治体では、専門職や事業者が限られ、すべての支援メニューを単独で整備することが難しい場合がある。そこで、次のような選択肢が議論された。
  • 複数自治体による共同設置
  • 家庭支援事業の共同実施
  • 都道府県による広域調整
  • 訪問、通所、ショートステイを組み合わせた多機能型事業
  • 親族や知人など、家庭がもともと持つつながりを生かした在宅支援
委員からは、人口規模や地域の実情に応じた複数のモデルを国が示し、自治体が自地域に合った方法を選べるようにすべきだとの意見が出された。

制度があっても利用できるとは限らない

今回の議論で特徴的だったのは、支援事業の数や実施率だけでなく、「必要な家庭が実際に利用できているか」を確認すべきだという視点だ。
制度があっても、次のような理由で利用につながらない場合がある。
  • 利用料を負担できない
  • 定員や受入枠が不足している
  • 対象要件に該当しない
  • 交通や距離の問題がある
  • 制度の存在を知らない
  • 支援を受けることへの心理的抵抗がある
たとえば、社会的養護を経験した人が子育てをしている場合、世帯収入だけでは支援の必要性が見えにくくても、頼れる家族がいないなどの困難を抱えている可能性がある。
支援制度を整備するだけでなく、誰が利用できていて、誰が利用できていないのか、利用できない理由は何かを把握することが必要になる。

児童相談所では業務負担と人材定着が課題

議題2では、児童相談所職員の人材確保・育成・定着が取り上げられた。(2026-6-8 こども家庭審議会児童虐待防止対策部会(第8回)-p.24
会議資料で紹介されたタイムスタディーでは、児童福祉司の業務時間の約3割が記録作成や資料作成に充てられていた。また、情報開示請求、行政不服審査、一時保護開始時の司法審査に伴う資料作成なども、実務的・精神的な負担になっているとされた。
部会では、業務の効率化に加えて、次のような取組が必要だとの意見が出された。
  • キャリアラダー・キャリアパスの整備
  • OJTとスーパービジョンの強化
  • 管理職向け研修の充実
  • 職員が意見を言える心理的安全性の確保
  • 児童福祉司と児童心理司の協働
  • 関係機関と合同で学ぶ研修
  • 個人の希望や適性に応じたジョブローテーション
キャリアラダーは、単に1年目、2年目と研修を並べるものではない。新任、中堅、上級、管理職などの段階ごとに、どのような姿勢、知識、技術を身につけるべきかを示す育成体系である。(2026-6-8 こども家庭審議会児童虐待防止対策部会(第8回)-p.27

児童心理司の役割とスーパービジョン

児童心理司については、トラウマケアや心理的支援に加え、児童福祉司とともに面接や家庭訪問に関わる体制が必要との意見が出た。(2026-6-8 こども家庭審議会児童虐待防止対策部会(第8回)-p.32
児童心理司が必要なケースに十分関われていない可能性や、心理職へのスーパービジョンが不足していることも指摘された。児童心理司の配置拡充、役割の明確化、心理職がバーンアウトしない体制づくりは、今後の検討課題となる。
なお、児童心理司の配置基準を引き上げることや、児童福祉法上の位置づけを明確にすることは、委員からの提案であり、今回決定されたものではない。

担当者との関係を継続することも支援

人事異動については、利用者側の視点から重要な指摘があった。
こどもにとって担当ケースワーカーは、単なる行政上の担当者ではなく、自分のことを理解してくれる身近な大人である。特に、安心して大人を頼る経験が十分でないこどもにとって、担当者の交代は大きな出来事になり得る。
委員からは、次のような対応が提案された。
  • 異動サイクルを長くする
  • 引き継ぎ期間を十分に設ける
  • 同じ地域や分野で継続して関われる仕組みをつくる
  • 児童相談所で働き続けたい職員が継続勤務できる選択肢を設ける
人材定着は、職員の離職防止だけの問題ではない。こどもや家庭との信頼関係を継続するという、支援の質に直結するテーマでもある。(2026-6-8 こども家庭審議会児童虐待防止対策部会(第8回)-p.31

こども家庭ソーシャルワーカー資格の取得促進

こども家庭ソーシャルワーカーについては、幅広い知識と実践経験を生かし、多機関・多職種連携の中核を担う人材として期待が示された。
事務局の説明では、資格取得者は2年間で1,322人にとどまっている。(2026-6-8 こども家庭審議会児童虐待防止対策部会(第8回)-p.25)委員からは、100時間の研修が取得のハードルになっているとの指摘があり、児童相談所の法定研修などとの重複を整理し、一部科目の受講免除を検討する方向が示された。
一方で、単に「取りやすい資格」にするのではなく、専門性や取得する価値を高めることが重要だとの意見も出た。
取得者数の集計期間や研修免除の具体的な条件については、最新の公式資料を確認する必要がある。

児童福祉法改正への対応

議題3では、令和7年4月に成立した児童福祉法等の改正について、施行に向けた対応が報告された。
対象となったのは、主に次の2点である。
  • 一時保護委託先の登録制度
  • 一時保護中の児童に対する面会・通信制限の要件明確化
面会・通信制限については、会議資料上、令和7年10月20日に施行済みと説明された。一時保護委託先の登録制度については「今年10月1日施行」とされているため、記事では対象年を確認して記載する必要がある。(2026-6-8 こども家庭審議会児童虐待防止対策部会(第8回)-p.38
具体的な登録要件や面会・通信制限の運用については、最新の法令、施行通知、自治体向け資料を確認したい。

「設置」から「機能」へ

今回の部会では、こども家庭センターの設置が全国で進んだ一方、支援の質、地域資源、職員の専門性、利用のしやすさには差が残っていることが示された。
今後の主要な論点は、次の5点に整理できる。
  1. 家族を中心にしたケースマネジメントの確立
  2. 人口規模や地域条件に応じた支援モデルの提示
  3. 家庭支援事業と地域の担い手の確保
  4. 児童相談所職員の専門性向上と定着
  5. 調査研究を研修やガイドライン、現場実践に生かす仕組み
重視されたのは、支援を「指導」や「監視」としてではなく、家族との「対話」「協働」「ケア」として実践する視点だ。(2026-6-8 こども家庭審議会児童虐待防止対策部会(第8回)-p.14
今回示された内容の多くは、国が今後検討する施策の方向性や、委員からの提案・要望である。こども家庭センターの設置義務化、児童心理司の配置基準引き上げ、市町村支援児童福祉司の配置強化などは、決定事項ではない。
今後は、制度が整備されたかだけでなく、必要な家庭が実際に支援へアクセスできているか、支援が継続しているか、家庭の困りごとがどのように変化したかを確認することが求められる。こども家庭センターは今、「設置する」段階から、地域で支援を「機能させる」段階へ移ろうとしている。
参考資料:2026-6-8 こども家庭審議会児童虐待防止対策部会(第8回)

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