令和9年度の保育関係予算は2兆7,221億円
こども家庭庁は、2027年度にあたる令和9年度の保育関係予算として、2兆7,221億円を概算要求しました。前年度予算額は2兆5,747億円です。(令和9年度予算 概算要求の概要-p.1、2兆7,221億円-p.2)
今回の概算要求では、保育士等のさらなる処遇改善の検討に加え、保育人材の確保、ICTを活用した業務負担の軽減、保育の質と安全性の向上、医療的ケア児や外国籍家庭への支援などが盛り込まれています。(令和9年度保育関係予算概算要求の主な内容-p.3、令和9年度保育関係予算概算要求の主な内容-p.4)
また、待機児童対策だけでなく、人口減少地域で保育所を子育て拠点として維持するための支援も示されています。(令和9年度保育関係予算概算要求の主な内容-p.4)
この記事で紹介する内容は、令和9年度予算の概算要求段階のものです。今後の予算編成や交付要綱の策定により、金額や制度内容が変更される可能性があります。
概算要求の主なポイント
令和9年度の保育関係予算では、主に次の分野が重視されています。(令和9年度保育関係予算概算要求の主な内容-p.3、令和9年度保育関係予算概算要求の主な内容-p.4)
- 保育士等の処遇改善と人材確保
- 保育ICT・DXの推進
- 保育の質と安全性の向上
- 医療的ケア児、障害児、外国籍家庭への支援
- 人口減少地域における保育提供体制の維持
- こども誰でも通園制度の運用改善
- 病児保育やベビーシッターなど多様な保育ニーズへの対応
- 保育施設や自治体の事務負担の軽減
| 主な項目 | 令和9年度概算要求額 |
| 就学前教育・保育施設整備交付金 | 820億円+事項要求229億円 |
| 保育対策総合支援事業費補助金 | 700億円 |
| 子どものための教育・保育給付交付金 | 1兆9,174億円+事項要求1兆8,758億円 |
| 子ども・子育て支援交付金 | 2,389億円+事項要求2,163億円 |
| 企業主導型保育事業 | 2,411億円 |
| 乳児等のための支援給付交付金 | 359億円 |
※事項要求は、予算編成過程で追加計上の是非を検討する項目です。各項目は制度上の区分が異なるため、金額を単純に合算することはできません。(施設型給付費等の支弁-p.45、令和9年度概算要求額-p.46、令和9年度概算要求額-p.47)
幼児教育・保育の無償化、0~2歳児を含む幼児教育・保育支援、児童福祉施設等の耐災害性強化なども、事項要求として引き続き検討されます。(令和9年度保育関係予算概算要求の主な内容-p.4)
保育士支援は「採用」から「定着」へ
処遇改善は具体化前の段階
「こども未来戦略」に基づき、民間給与の動向などを踏まえた保育士等のさらなる処遇改善が検討されています。(令和9年度保育関係予算概算要求の主な内容-p.3)
ただし、概算要求資料では、具体的な改善額、対象となる職種、給与への反映方法までは示されていません。今後の予算編成や公定価格、関係通知で確認する必要があります。
保育士・保育所支援センターを強化
保育士・保育所支援センターを、地域の保育人材確保の拠点として強化します。(保育士・保育所支援センター設置運営事業①-p.8、保育士・保育所支援センター設置運営事業②-p.9)
主な取組は次のとおりです。
- 保育の仕事に関する広報
- 保育士資格取得の支援
- 潜在保育士への就職・復職支援
- 保育士の就業継続支援
- 保育所の職場環境改善に関する助言
- 関係機関との地域ネットワークづくり
- 小中高生向けの保育体験・職業体験
- 求職者と保育所のマッチング支援
センターの取組には、地域の実情に応じたKPIを設定します。新規登録者数や、登録者のうち就職につながった件数などの成果に応じて、基本分・加算分の補助基準額を1.2倍または1.4倍に引き上げる仕組みも示されています。(保育士・保育所支援センター設置運営事業①-p.8)
さらに、潜在保育士などの利用者向けに、マッチングサイトやスマートフォンアプリの使いやすさを改善する取組、地域の保育人材確保プラットフォームの構築に向けた実証も支援対象となります。(保育士・保育所支援センター設置運営事業②-p.9)
資格取得や復職を支援
保育士資格の取得については、養成校ルートと試験ルートの双方を支援します。(保育士資格等取得支援事業-p.10)
- 養成校の受講料:2分の1、上限30万円
- 代替職員経費:1人1日8,970円
- 保育士試験の学習費:2分の1、上限15万円
- 認可外保育施設で働く保育従事者の資格取得支援
- 潜在保育士の再就職支援
認可外保育施設については、指導監督基準への適合を目指す施設を対象とした資格取得支援を、令和11年度末まで延長する案が示されています。(保育士資格等取得支援事業-p.10)
宿舎借り上げや保育補助者の配置を支援
保育士の就業継続に向けて、宿舎借り上げ支援も盛り込まれています。対象は、保育士として採用された日から5年以内の常勤保育士で、補助基準額は月額7万5,000円が上限です。(保育士宿舎借り上げ支援事業-p.11)
ただし、実際の利用条件や自治体ごとの上限額は、制度の確定後に自治体の案内を確認する必要があります。
また、次のような周辺業務を担う保育支援者の配置も支援対象です。(保育体制強化事業-p.12)
- 清掃や遊具の消毒
- 給食の配膳・片付け
- 寝具の準備
- 外国籍家庭との通訳・翻訳
- 園外活動時の見守り
- 登園時やプール活動時などのスポット支援
保育士の採用数を増やすだけでなく、保育士が専門的な業務に集中し、働き続けられる環境を整える狙いがあります。
保育DXで現場・自治体・保護者の負担を軽減
令和9年度は、保育ICTの導入支援に加え、複数のシステムを連携させる取組が進められます。(保育所等におけるICT化推進等事業①-p.17、保育所等におけるICT化推進等事業②-p.18、保育ICT人材育成・業務改善支援事業-p.19)
ICT導入の対象業務
補助対象として、次のような業務が示されています。
- 保育計画や記録
- 保護者との連絡
- こどもの登降園管理
- 実費徴収やキャッシュレス決済
- 外国籍家庭との通訳・翻訳
- こども誰でも通園制度の空き枠登録・入退室管理
- 病児保育の予約・キャンセル管理
- 医療的ケア児とのコミュニケーション
- 認可外保育施設の保育記録
- 研修のオンライン化
保育ICTのシステム導入費は、機能数に応じて1施設当たり20万円から80万円。端末購入を伴う場合は、最大130万円とされています。(保育所等におけるICT化推進等事業②-p.18)
ただし、これは概算要求時点の補助基準額です。対象製品、申請方法、維持費や更新費の扱いは、今後の実施要綱や自治体の案内で確認する必要があります。
システム連携で重複入力を減らす
次のようなシステムの連携も進められます。
- 保育業務施設管理プラットフォーム
- 自治体の子ども・子育て支援システム
- 保育ICTシステム
- ここdeサーチ
- 保活情報連携基盤
- こども誰でも通園制度総合支援システム
保育業務施設管理プラットフォームでは、給付請求、給付金の計算、監査書類の提出・通知などを扱います。(保育業務施設管理プラットフォームの運用保守業務-p.69、保育業務施設管理プラットフォームの改修業務-p.70)
保活情報連携基盤では、保護者による施設検索や見学予約、企業による就労証明書の発行、自治体による空き枠情報の登録などをオンラインで連携します。(保活情報連携基盤の運用保守業務-p.71、保活情報連携基盤改修事業-p.72)
保育DXは、事務作業の効率化だけでなく、保育士や自治体職員がこどもと向き合う時間を確保し、保育の質を高めることも目的としています。
保育の質と安全性を強化
保育指針等の改定に向けて環境を整備
保育所保育指針や幼保連携型認定こども園教育・保育要領については、改定に向けた審議が行われています。(新しい保育所保育指針等の円滑な実施に向けた環境の整備事業-p.56)
これを踏まえ、次の取組が予定されています。
- 解説書や参考資料の作成
- 全国8ブロックでの説明会
- 実践事例を検索できるコンテンツサイト
- オンライン研修の提供
現時点で改定内容が確定したという意味ではなく、今後の周知や実践に向けた環境整備を進めるものです。
事故・虐待・性被害を防止
安全対策では、次のような設備整備や研修、体制づくりが示されています。
- 午睡センサーなど睡眠中の事故防止機器
- ICTを活用した見守り機器
- 性被害防止のための設備・備品
- 園外活動時の安全対策
- 重大事故防止に関する研修
- 巡回支援指導員による助言・指導
- 虐待防止に関する職員研修
- 自治体の虐待対応実務者会議
- 専門人材の活用
保育士特定登録取消者管理システムについては、自治体が管内の保育所等におけるDBの活用状況を確認できるよう改修します。こども性暴力防止法関連システムや、教員性暴力等防止法データベースとの連携に向けた機能改修も予定されています。(保育士特定登録取消者管理システムの運用保守・機能改修-p.73)
地域全体で保育の質を高める
保育の質の向上に向けて、次の取組も進められます。
- 第三者評価の改善モデル
- 保育指導職や幼児教育センターを核とした地域ネットワーク
- 保育士等キャリアアップ研修
- ミドルリーダーの育成
- 保育実習指導者への講習
- 保育士試験合格者への実技講習
園単独の取組だけでなく、自治体、養成校、関係団体、保育施設が連携し、地域単位で保育の質を高める方向が示されています。(保育所等における第三者評価改善モデル事業-p.57、地域における保育の質の向上の体制整備調査研究-p.58、保育士養成課程等の見直しを踏まえた体制整備事業-p.59、保育所・認定こども園等における自然体験活動等の充実事業-p.60、保育の質の向上のための研修等事業-p.61、保育士等キャリアアップ研修事業-p.62、保育士等のミドルリーダーの活躍による保育の質向上推進事業-p.63、保育士等のミドルリーダーの活躍による保育の質向上推進事業-p.64)
医療的ケア児や外国籍家庭への支援
医療的ケア児の受け入れ体制を整備
医療的ケア児や重症心身障害児を受け入れるため、施設と自治体の双方を支援します。(医療的ケア児等保育支援事業-p.33)
- 看護師等の配置
- 医療的ケア児保育支援者の配置
- 看護師等による巡回支援
- 受け入れガイドラインの策定
- 検討会や連絡会議の開催
- 研修費用
- 医療的ケア児に必要な備品
- 停電時などに備えた災害対策備品
- 園外活動時の移動支援
新たに医療的ケア児の受け入れを始める自治体については、補助率を引き上げる仕組みも示されています。
外国籍等の家庭を支援
外国籍等の家庭に対しては、次のような支援が予定されています。(家庭支援推進保育事業-p.29)
- 多言語での連絡文書
- 面談時の通訳
- オンライン通訳
- 保護者や保育者からの相談対応
- 関係機関へのつなぎ支援
- 外国籍等家庭のこどもが多い施設への職員加配
- 未就園家庭への相談支援
支援職員の配置や補助の対象となる割合などには条件があるため、利用を希望する場合は自治体への確認が必要です。
人口減少地域では保育所を子育て拠点に
人口減少地域では、保育所が地域で唯一の子育て支援拠点となっている場合があります。保育所の運営が難しくなると、保護者の就労だけでなく、こどもや家庭が集まる場も失われる可能性があります。
そこで、地域分析ツールを活用して将来の保育ニーズや保育資源を分析し、地域の実情に応じた保育提供体制を検討します。(将来の人口減少に備える取組を行う自治体への支援施策-p.38、人口減少地域等における子育て拠点保育施設支援事業-p.40)
主な支援内容は次のとおりです。
- 地域の保育ニーズや保育資源の分析
- 人口減少対策に関する先駆的な取組
- 保育所の統廃合や多機能化
- 病児保育や放課後児童クラブとの一体的な整備
- 保育所を子育て拠点として運営する取組
- 2歳児の利用減少を踏まえた在宅低年齢児への相談支援
「人口減少地域等における子育て拠点保育施設支援事業」では、1自治体当たり1,200万円、補助割合は国3分の2、市町村3分の1とする案が示されています。(人口減少地域等における子育て拠点保育施設支援事業-p.40)
対象となるのは、離島、過疎地域、特別豪雪地帯、振興山村などの「特別地域」にある施設です。全国すべての保育所が対象となるわけではありません。(人口減少地域等における子育て拠点保育施設支援事業-p.40)
施設整備・待機児童対策も継続
就学前教育・保育施設整備交付金では、次の整備を支援します。(参 考 資 料-p.5)
- 保育所の新設・修理・改造
- 認定こども園の整備
- 小規模保育施設の整備
- こども誰でも通園制度の実施事業所の整備
- 防音壁の設置
- 防犯対策の強化
- 熱中症対策設備
待機児童が多い地域での定員増加や、人口減少地域での施設統廃合・多機能化などについては、一定の要件を満たす場合に補助率を引き上げる仕組みがあります。(参 考 資 料-p.5)
都市部では、高い賃借料と公定価格上の賃借料加算との差額、土地借料、民有地と保育所整備法人のマッチングなども支援対象です。(都市部における保育所等への賃借料等支援事業-p.23、民有地マッチング事業-p.24)
こども誰でも通園制度の運用を改善
こども誰でも通園制度は、保育所、認定こども園、地域型保育施設、企業主導型保育施設などに在籍していない、生後6か月から満3歳未満のこどもを対象とする制度です。(乳児等のための支援給付交付金(こども誰でも通園制度)-p.46)
概算要求資料では、次の基本単価が示されています。
- 0歳児:1時間当たり1,700円
- 1・2歳児:1時間当たり1,400円
- 利用可能時間:月10時間を上限
この単価は制度上の給付・補助の基準となるもので、保護者が実際に支払う利用料を示すものではありません。利用料や予約方法は、自治体や事業所によって異なる場合があります。
障害児、要支援家庭のこども、医療的ケア児を受け入れる場合の加算も示されています。(乳児等のための支援給付交付金(こども誰でも通園制度)-p.46)
令和9年度は、こども誰でも通園制度総合支援システムに監査機能を追加する予定です。(こども誰でも通園制度総合支援システム改修業務-p.48)
- 標準的な監査項目を備えた監査調書
- 事業者向け自己点検票
- 自治体独自の基準を反映する機能
- 事業者による自己点検結果の入力機能
これにより、自治体による指導監査の標準化と、自治体・事業者双方の負担軽減を図ります。
病児保育やベビーシッターなどにも対応
病児保育では、企業主導型保育事業で実施する病児保育も含め、空き状況を保護者が確認できるシステムを自治体が構築する場合、その費用を補助します。(保育所等におけるICT化推進等事業①-p.17)
ベビーシッターについては、次の取組を拡充する案が示されています。(安全で質の高いベビーシッター利用促進事業-p.60、ベビーシッターの研修機会の確保及び資質向上事業-p.64)
- 平日夜間や土日を含む研修機会の拡大
- 指導監督基準に適合したベビーシッター向けのフォローアップ研修
- ベビーシッター向けフォーラム
- 基準適合事業者を掲載する全国プラットフォーム
- 事業停止命令などを含む情報共有データベース
- マッチングサイトのガイドライン適合状況調査サイトとの統合
また、要支援児童や要保護児童、その保護者を支援する地域連携推進員について、保育所等への配置が難しい自治体では、保育業務主管課への配置や委託を可能とする案も示されています。(保育所等における要支援児童等対応推進事業-p.30)
まとめ
令和9年度の保育関係予算概算要求は、保育の受け皿を増やすだけでなく、保育を支える人材、現場の業務、地域の持続性まで含めて支援する内容となっています。(令和9年度保育関係予算概算要求の主な内容-p.3、令和9年度保育関係予算概算要求の主な内容-p.4)
特に押さえておきたいポイントは次の6点です。
- 保育士等のさらなる処遇改善を検討
- 保育士・保育所支援センターを中心に採用・定着・復職を支援
- ICTやシステム連携により、保育士・自治体・保護者の負担を軽減
- 事故、虐待、性被害の防止と保育の質向上を強化
- 医療的ケア児、障害児、外国籍家庭などへの支援を拡充
- 人口減少地域では、保育所を多機能な子育て拠点として維持
一方で、今回の内容はあくまで概算要求です。処遇改善の具体額、補助制度の申請条件、事業の開始時期、自治体ごとの実施状況などは、今後の予算成立や交付要綱によって確定します。
施設運営者や自治体が制度の活用を検討する際は、国の制度概要だけでなく、所在地の自治体が公表する申請要領や「保育提供体制の確保のための実施計画」の採択状況を確認することが重要です。(新規・見直し関連資料-p.37、就学前教育・保育施設整備交付金-p.5)

