概算要求で示された主な施策を整理
こども家庭庁は、令和9年度の「放課後児童対策、こども・子育て支援関連予算」の概算要求を公表しました。(令和9年度-p.1)
今回の資料では、放課後児童クラブの待機児童対策を中心に、次のような施策が示されています。
- 放課後児童クラブの受け皿拡大
- 放課後児童支援員の人材確保・処遇改善
- 学校や保育所などを活用した多様な居場所づくり
- 妊娠期からの経済支援・相談支援
- 家事・育児負担を抱える家庭への支援
- こども家庭センターを中心とした地域連携
2025年(令和7年)5月1日時点の放課後児童クラブの登録児童は157万人、待機児童は1.6万人でした。国は、登録児童数がピークとなる2030年頃を見据え、約165万人分の受け皿確保を目指しています。(放課後児童対策パッケージ2026(令和7年12月)概要-p.14)
ただし、今回の資料はあくまで概算要求段階のものです。最終的な予算額、事業の採否、補助条件、申請方法などは、今後の予算編成や正式な実施要綱によって変更される可能性があります。
令和9年度の重点は「場・人・つなぐ支援」
今回の施策は、次の3つの視点で整理できます。
| 視点 | 主な施策 |
| 放課後の「場」を増やす | 施設整備、学校・保育所・児童館の活用、企業による預かり機能 |
| 支援を担う「人」を確保する | 処遇改善、研修、求人・マッチング、巡回アドバイザー |
| 必要なこどもを支援に「つなぐ」 | 利用調整、送迎、高学年向け居場所、家庭支援、相談支援 |
単に放課後児童クラブの定員を増やすだけでなく、地域の既存施設や民間の力を活用し、地域ごとのニーズに応じた支援を組み合わせる方向です。
放課後児童クラブの受け皿を拡大
放課後児童クラブは、保護者が労働などにより昼間家庭にいない小学生に、授業終了後などの遊びや生活の場を提供する事業です。実施主体は市町村で、市町村が適切と認めた者に委託することもできます。(放課後児童クラブ関係予算のポイント①-p.1)
令和9年度の概算要求では、次のような運営・整備支援が示されています。(放課後児童クラブ関係予算のポイント①-p.1)
- 常勤の放課後児童支援員を2人以上配置する場合の補助
- 既存施設を改修して新たにクラブを開設する場合の補助
- アパートなどを活用してクラブを開設する場合の賃借料支援
- 児童の送迎に必要な経費への補助
- 障害児を受け入れる場合の加配職員の配置
- 医療的ケア児への支援に必要な専門職員の配置
- 19人以下の小規模クラブで複数の支援員を配置する場合の補助
- 要支援児童・要保護児童に対応する専門職員の配置
- 清掃や学習環境の整備などを担う職員の配置
- 第三者評価の受審費用
- クラブを利用できなかった児童を他の施設につなぐ利用調整支援
施設整備の補助率を引き上げる案
放課後児童クラブや病児保育施設の整備を支援する「子ども・子育て支援施設整備交付金」には、令和9年度に88億円が概算要求されています。なお、この金額は放課後児童クラブと病児保育施設を含む交付金全体の額で、放課後児童クラブ分は内数です。(子ども・子育て支援施設整備交付金-p.3)
放課後児童クラブの施設整備については、公立の場合、通常は国・都道府県・市町村がそれぞれ3分の1を負担します。(子ども・子育て支援施設整備交付金-p.3)
待機児童の解消を目的とする場合は、次のように国の補助率を引き上げる案が示されています。
- 国:3分の2
- 都道府県:6分の1
- 市町村:6分の1
さらに、特に緊急性の高い自治体では、国5分の6、都道府県・市町村がそれぞれ12分の1とする案も示されています。(子ども・子育て支援施設整備交付金-p.3)
ただし、補助率の引き上げには、財政力指数などの要件があります。対象となる工事や申請方法は、正式な交付要綱の確認が必要です。
支援員の処遇改善と人材確保
待機児童対策では、施設だけでなく、放課後児童支援員などの人材確保も重要です。
概算要求では、次の処遇改善策が示されています。(放課後児童クラブ関係予算のポイント①-p.1)
- 18時30分を超えて開所するクラブの職員の処遇改善
- 勤続年数や研修実績に応じたキャリアアップ支援
- 収入を3%程度、月額9,000円相当引き上げるための補助
ただし、月額9,000円相当という金額は、職員全員への一律給付を直接約束するものではありません。事業者が行う賃金改善を補助する仕組みであり、対象職員や支給方法は正式な実施要綱で確認する必要があります。
また、保育士・保育所支援センターにおいて、放課後児童支援員の求人情報や研修情報を提供し、事業者とのマッチングを行う案も示されています。市町村では、再就職支援や就業継続支援も行う方針です。(放課後児童クラブの人材確保支援-p.10)
人材確保策として、次のような取組も想定されています。(放課後児童クラブ待機児童対策支援実証等事業-p.4)
- 大学・短大と連携したインターンシップ
- 放課後児童クラブの職場見学会
- シルバー人材センターと連携した研修
- スポーツクラブや塾などの民間事業者への参入促進
- 放課後児童クラブの仕事の魅力を発信する広報
待機児童が多い自治体向けには、職員確保や民間事業者の参入を促進する実証事業が要求されています。(放課後児童クラブ待機児童対策支援実証等事業-p.4)
対象は、待機児童数が300人以上の都道府県、または100人以上の市町村です。補助率は国10分の10、補助基準額案は都道府県1,000万円、市町村300万円とされています。(放課後児童クラブ待機児童対策支援実証等事業-p.4)
放課後の居場所を多様化
企業などによる小学生の預かり機能
新規事業として、企業や民間団体の創意工夫を活用した「小学生の預かり機能構築モデル事業」が要求されています。(企業等の活力を活かした小学生の預かり機能構築モデル事業-p.5)
主な対象は、共働き世帯などの小学生、とくに低学年です。企業主導型保育施設、認可外保育施設、小規模保育施設などの余裕スペースを優先的に活用し、次のような取組を行う案です。(企業等の活力を活かした小学生の預かり機能構築モデル事業-p.5)
- 預かりの場や人材の確保
- 賃借料や人件費への補助
- 人材確保・育成支援
- 運営上の課題分析
- こどもの意見を聴く取組
- 学校、地域、職域、家庭との連携
補助基準額案は1事業あたり2,000万円です。モデル事業の成果を報告書にまとめ、好事例を全国に広げることも想定されています。(企業等の活力を活かした小学生の預かり機能構築モデル事業-p.5)
なお、この事業はモデル事業であり、すべての地域で直ちに利用できる制度ではありません。
小学校高学年向けの居場所
小学校4~6年生を対象とする放課後の居場所づくりのモデル事業も要求されています。(小学校高学年を対象にした放課後児童対策モデル事業-p.6)
資料では、放課後児童クラブの待機児童のうち、小学校高学年児童が占める割合を56.7%としています。(小学校高学年を対象にした放課後児童対策モデル事業-p.6)高学年児童は、塾や習い事など、低学年とは異なる放課後の過ごし方や利用ニーズを持つことから、専用の居場所づくりを進める考えです。
モデル事業では、学校施設などを活用し、次のような取組を行う案が示されています。(小学校高学年を対象にした放課後児童対策モデル事業-p.6)
- 安全確保スタッフを2人以上配置
- 利用時・帰宅時の所在管理
- 運動、表現、学習などのプログラム
- こどもや保護者からの意見聴取
- 事業の効果検証と報告書作成
高学年の待機児童が20人以上見込まれる市町村を優先し、補助基準額案は1自治体あたり350万円、補助率は国2分の1、市町村2分の1です。(小学校高学年を対象にした放課後児童対策モデル事業-p.6)
待機児童向けの緊急的な居場所
待機児童が10人以上いる、または発生する見込みのある市町村では、「放課後居場所緊急対策事業」を実施する案も示されています。(放課後居場所緊急対策事業-p.7)
児童館、公民館、小学校などを活用し、放課後児童クラブを利用できない児童に居場所を提供します。専門スタッフを1人以上配置し、入退館の把握や見守りを行います。(放課後居場所緊急対策事業-p.7)
主な要件は次のとおりです。
- 原則週3日以上
- 1日2時間以上の開所
- 国・都道府県・市町村がそれぞれ3分の1を負担
- 運営費の補助基準額案は年額121万1,000円
- 設備費などの補助基準額案は年額50万円
塾やスポーツクラブなどの習い事をしている時間帯は、補助対象外とされています。(放課後居場所緊急対策事業-p.7)
小規模・多機能型の放課後支援
保育所、一時預かり、地域子育て支援拠点などと組み合わせ、10人程度の小規模な放課後預かりを行う事業も示されています。(小規模多機能・放課後児童支援事業-p.8)
活用が想定される場所は、次のとおりです。
- 保育所の空きスペース
- 公営住宅
- 空き店舗
- 老人デイサービスセンター
- 保健医療機関
放課後児童支援員の配置、設備整備、職員の共同研修、児童の相互交流などを通じ、地域の実情に合った多機能型の支援を目指します。(小規模多機能・放課後児童支援事業-p.8)
安全対策とICT化
性被害防止のための設備整備
新規事業として、放課後児童クラブなどにおける性被害防止対策への支援が要求されています。(放課後児童クラブ等における性被害防止対策に係る設備等支援-p.3)
対象設備の例は、次のとおりです。
- パーテーション
- 簡易扉
- 簡易更衣室
- カメラ
- 人感センサーライト
補助率は国2分の1、都道府県など4分の1、事業者4分の1です。補助基準額案は1施設あたり10万円で、放課後児童クラブは1支援単位あたりとされています。(放課後児童クラブ等における性被害防止対策に係る設備等支援-p.3)
実際の設備導入にあたっては、プライバシー保護や個人情報の管理、安全確保の方法も確認する必要があります。
ICTによる業務負担の軽減
放課後児童クラブなどのICT化については、次の取組が補助対象として示されています。(放課後児童クラブ等におけるICT化推進事業-p.12)
- 保護者との連絡
- 入退館管理
- オンライン相談
- オンライン研修
- 多言語音声翻訳システムの導入
資料では、システム導入の補助基準額案を1か所あたり50万円、翻訳機などの購入を1か所あたり15万円としています。(放課後児童クラブ等におけるICT化推進事業-p.12)
ただし、資料には「令和8年度補助基準額案」と記載されているため、令和9年度に同じ金額が適用されるかは、今後の正式な資料で確認する必要があります。
妊婦・子育て家庭への経済支援
妊婦のための支援給付
「妊婦のための支援給付」では、妊娠期からの経済的支援を行います。(妊婦のための支援給付交付金-p.13)
日本国内に住所を有する妊婦が対象で、次の2段階で支給されます。
- 妊婦給付認定を受けた場合:5万円
- 妊娠しているこどもの人数を届け出た場合:こども1人につき5万円
単胎妊娠の場合は、合計10万円となります。多胎妊娠では、2回目の支給額がこどもの人数に応じて増えます。
支給には申請と認定が必要で、自動的に支給されるものではありません。支給方法は現金振込または小切手が基本ですが、市町村がクーポンなどを併用する場合には、希望者がクーポンなどで受け取ることも可能とされています。(妊婦のための支援給付交付金-p.13)
令和9年度の概算要求額は762億円です。申請時期や必要書類、転出入時の扱いは、市区町村によって確認が必要です。(妊婦のための支援給付交付金-p.13)
児童手当
児童手当については、令和6年10月から実施されている拡充内容を前提に、令和9年度に2兆663億円が概算要求されています。(児童手当-p.27)
主な内容は次のとおりです。
- 所得制限なし
- 高校生年代まで支給
- 第3子以降は月額3万円
- 偶数月に年6回支給
- 親などの経済的負担がある場合、22歳年度末までの上の子を多子加算のカウント対象とする
| 年齢 | 第1子・第2子 | 第3子以降 |
| 3歳未満 | 1万5,000円 | 3万円 |
| 3歳から高校生年代 | 1万円 | 3万円 |
出生や転入時には申請が必要になる場合があります。公務員は原則として所属庁が申請先です。(児童手当-p.27)
妊娠期からの相談支援
妊婦等包括相談支援では、妊婦や配偶者などに面談を行い、出産・育児の見通しを立てるための情報提供や相談を行います。必要に応じて、医療、福祉、子育て支援などのサービスにつなぐ伴走型の支援です。(利用者支援事業(妊婦等包括相談支援事業型)-p.16)
こども家庭センター1か所あたりの補助基準額案は、妊娠届出受理数に応じて912万4,000円から1,739万7,000円です。補助率は国2分の1、都道府県4分の1、市町村4分の1とされています。(利用者支援事業(妊婦等包括相談支援事業型)-p.16)
また、利用者支援事業では、子育て家庭や妊産婦が保育、教育、保健、医療、福祉などのサービスを利用しやすくなるよう、相談、情報提供、関係機関との連絡調整を行います。(利用者支援事業-p.17)
地域子育て支援拠点では、次のような支援を行います。
- 親子の交流の場の提供
- 子育て相談
- 地域の子育て情報の提供
- 子育てに関する講習
2025年度(令和7年度)の実施か所数は8,158か所です。(地域子育て支援拠点事業-p.18)
相談先が分からない場合は、住民票のある市区町村のこども家庭センターや子育て支援担当窓口に確認するとよいでしょう。
家庭の困りごとに対応する支援
家庭支援事業では、問題が深刻化した後だけでなく、育児疲れ、孤立、家事・育児負担、親子関係の悩み、ヤングケアラーなどへの早期支援を目指します。
子育て短期支援事業
保護者の疾病、育児疲れ、仕事、出産、看護、冠婚葬祭などにより、一時的に家庭での養育が難しい場合、児童養護施設などでこどもを預かります。(子育て短期支援事業-p.20)
主な支援は次のとおりです。
- ショートステイ
- 平日夜間や休日のトワイライトステイ
- 親子でのレスパイト・ケア
- こども自身が一時的に保護者と離れることを希望する場合の支援
子育て世帯訪問支援事業
訪問支援員が家庭を訪問し、次のような支援を行います。(子育て世帯訪問支援事業-p.21)
- 食事準備、洗濯、掃除、買い物
- 育児のサポート
- 保育所などへの送迎
- 宿題の見守り
- 不安や悩みの傾聴
- 子育て支援制度の情報提供
対象には、妊産婦、ヤングケアラーがいる家庭、養育に不安を抱える家庭などが含まれます。虐待リスクなどが高まる前に、家庭や養育環境を整えることが目的です。
児童育成支援拠点事業
家庭や学校に居場所がないこどもなどを対象に、次のような支援を包括的に行います。(児童育成支援拠点事業-p.22)
- 安全・安心な居場所の提供
- 生活習慣づくり
- 学習支援
- 食事の提供
- 課外活動
- 学校、医療機関、地域団体との連携
- 保護者への相談支援
- 必要に応じた送迎
ソーシャルワーク専門職員、心理療法担当職員、長時間開所、賃借料などに対する加算も示されています。(児童育成支援拠点事業-p.22)
親子関係形成支援事業
親子関係や子育てに悩みを抱える家庭に対し、講義、グループワーク、ロールプレイなどを通じたペアレント・トレーニングを実施します。(親子関係形成支援事業-p.23)
保護者同士が悩みや情報を共有する場も設けられます。1講座4回分の補助基準額案は9万5,600円です。(親子関係形成支援事業-p.23)
これらの家庭支援事業は、実施状況、利用料、利用回数、申込方法が自治体によって異なる場合があります。
こどもの居場所と地域連携
新規事業として、こどもの肯定的な体験、PCEs(Positive Childhood Experiences)を増やすための基盤整備も要求されています。(こどものウェルビーイング基盤整備事業(居場所・体験創出基盤事業)(仮称)-p.25)
重視される体験の例は、次のとおりです。
- 自分の気持ちを話せる
- 困ったときに誰かがそばにいてくれる
- 安全に守られていると感じる
- 学校や地域に居場所がある
- 友人や大人に支えられている
- 地域の行事に参加する
地域の居場所づくり、官民の実践者のネットワーク化、オンライン研修、地域ブロック研修、調査研究などを通じて、こどもが安心できる関係性の中で主体的に活動できる環境を整える考えです。(こどものウェルビーイング基盤整備事業(居場所・体験創出基盤事業)(仮称)-p.25)
この事業の令和9年度概算要求額は7億円です。(こどものウェルビーイング基盤整備事業(居場所・体験創出基盤事業)(仮称)-p.25)
また、重い病気のこどもと家族を支援する「こどもホスピス支援モデル事業」には2億円が概算要求されています。医療・教育・福祉関係者による協議会、実態調査、普及啓発、地域型こどもホスピスによる遊び・学び・交流・家族支援などを対象とする案です。(こどもホスピス支援モデル事業-p.26)
さらに、こども家庭センターを中核とした「こども包括支援基盤強化事業」には5億円が概算要求されています。(こども包括支援基盤強化事業-p.28)
重点強化自治体では、次の3項目を必須とする案が示されています。(こども包括支援基盤強化事業-p.29)
- 地域全体の包括的支援体制の検討・構築
- 加配、巡回、派遣による相談支援機能の強化
- 継続的な支援調整とケースマネジメントの実装
まとめ
令和9年度の概算要求では、放課後児童クラブの待機児童解消に向けて、次の取組を一体的に進める方向が示されています。
- 学校、保育所、児童館、賃貸物件などを活用して放課後の場を増やす
- 支援員の処遇改善、研修、求人・マッチングで人材を確保する
- 高学年向け、企業による預かり、小規模・多機能型など居場所を多様化する
- 性被害防止設備やICT導入により、安全性と運営効率を高める
- 妊婦への給付、児童手当、妊娠期からの相談支援を行う
- 訪問支援、ショートステイ、児童育成支援拠点などで家庭の困りごとに対応する
- こども家庭センターを中心に、地域の相談機関や支援機関をつなぐ
今回の内容は、あくまで令和9年度予算の概算要求です。最終的な予算額、補助条件、申請方法、実施地域は今後決まります。
子育て世帯は、妊婦のための支援給付や家庭支援事業について、市区町村のこども家庭センターや子育て支援担当窓口を確認してください。放課後児童クラブの運営者や地域団体は、今後公表される交付要綱・実施要綱の確認が必要です。
今回の概算要求は、学童の定員を増やすだけでなく、支援を担う人材、地域の居場所、妊娠期からの相談、家庭への訪問支援までを組み合わせ、こどもと家庭を切れ目なく支える方向を示したものといえます。

