はじめに
国立大学法人等の研究成果を、大学発ベンチャーやファンドを通じて社会実装へつなげるための制度が「特定研究成果活用支援事業」です。この制度は、大学の技術に関する研究成果を活用して事業を行うベンチャー企業やファンドに対し、助言や資金供給などの支援を行う仕組みです。(特定研究成果活用支援事業の趣旨-p.2 重要なのは、大学が単に研究成果を保有しているだけではなく、その成果を事業活動に活用する事業者を制度として支援できる点にあります。
また、実際に大学が関与するには「認定」と「認可」という2つの手続きがあるため、両者の違いを押さえておくことが大切です。(特定研究成果活用支援事業の趣旨-p.2)
特定研究成果活用支援事業とは
産業競争力強化法では、「特定研究成果活用支援事業」を、国立大学法人等における技術に関する研究成果を、その事業活動において活用する者に対し、当該事業活動に関する必要な助言、資金供給その他の支援を行う事業であって、当該国立大学法人等における研究の進展に資するものと定義しています。(特定研究成果活用支援事業の趣旨-p.2 簡単に言えば、大学の研究成果を活用して事業を進めるベンチャー企業や、それを支えるファンドを後押しするための制度です。研究成果の社会実装を、法令に基づいて進めやすくするのがこの制度の役割です。(特定研究成果活用支援事業の趣旨-p.2)
対象となる「技術に関する研究成果」
この制度の対象は、「技術に関する研究成果」です。これは、産業の発展や新しい社会的価値の創造に寄与しうるもので、純粋な基礎研究や思想・表現などは含まれません。(特定研究成果活用支援事業の趣旨-p.2)
具体例としては、特許権、実用新案権、これらを受ける権利、半導体集積回路に係る回路配置利用権などが想定されています。なお、必ずしも権利化されている必要はありません。(特定研究成果活用支援事業の趣旨-p.2)
誰が認定を受けるのか
特定研究成果活用支援事業を実施しようとする者は、事業計画を作成し、文部科学大臣および経済産業大臣の認定を受けることができます。(特定研究成果活用支援事業の趣旨-p.2)
認定の対象には、次のような者が含まれます。
- 特定研究成果活用支援事業を実施する法人を設立しようとする者
- 特定研究成果活用支援事業を実施しようとする投資事業有限責任組合
- 特定研究成果活用支援事業を実施する投資事業有限責任組合を組合契約によって成立させようとする者(特定研究成果活用支援事業の趣旨-p.2)
認定を受けるためには、事業計画が次の2点に適合する必要があります。
- 実施指針に照らして適切であること
- 事業が円滑かつ確実に実施されると見込まれること(特定研究成果活用支援事業の趣旨-p.2)
国立大学法人等ができること
産業競争力強化法第21条では、国立大学法人等が、認定特定研究成果活用支援事業者に対して、資金の出資や人的・技術的援助を行うことができるとされています。(特定研究成果活用支援事業の趣旨-p.2ここでいう認定特定研究成果活用支援事業者とは、第19条第1項の認定を受けた者を指します。その者の設立に係る法人や、その者によって成立した投資事業有限責任組合も含まれます。(特定研究成果活用支援事業の趣旨-p.2)
つまり、大学が出資できるのは、認定を受けた事業者が前提です。さらに、国立大学法人等が出資する場合には、出資の都度、文部科学大臣の事前認可が必要になります。(特定研究成果活用支援事業の趣旨-p.2)
「認定」と「認可」の違い
この制度では、「認定」と「認可」を分けて理解することが重要です。
- 認定
事業計画が法令や実施指針に適合しているかを確認する手続き
→ 文部科学大臣・経済産業大臣が行う
要するに、まず事業計画が認定され、その後に大学の出資ごとに認可を受けるという順番です。(特定研究成果活用支援事業の趣旨-p.2)
スキーム1:大学が大学VCを設立し、ファンドに出資する流れ
スキーム1は、国立大学法人等が出資して大学VCを設立し、その後ファンドを組成し、大学がそのファンドにLP出資する流れです。ここでいう大学VCとは、大学における技術に関する研究成果を活用した大学発ベンチャーへの投資・支援を主たる目的とするVCを指します。(特定研究成果活用支援事業のスキーム及び認定・認可の手続の流れ(1)-p.3)
手続きの流れは次のとおりです。(特定研究成果活用支援事業のスキーム及び認定・認可の手続の流れ(1)-p.3)
- 国立大学法人等が、大学VCに係る特定研究成果活用支援事業に関する計画を文部科学大臣・経済産業大臣に提出する
- 両大臣がその計画を認定する
- 国立大学法人等が、大学VCへの出資に係る出資認可申請書を文部科学大臣に提出する
- 文部科学大臣が、財務大臣と協議の上で認可する
- 大学VCが設立される
- 大学VCが、ファンドに係る特定研究成果活用支援事業に関する計画を提出する
- 両大臣がその計画を認定する
- 国立大学法人等が、ファンドへの出資に係る出資認可申請書を文部科学大臣に提出する
- 文部科学大臣が、財務大臣と協議の上で認可する
- その後、大学がファンドにLP出資する(特定研究成果活用支援事業のスキーム及び認定・認可の手続の流れ(1)-p.3)
このスキームでは、大学VCとファンドの両方が制度上の認定対象となり、大学は段階ごとに出資認可を受ける必要があります。(特定研究成果活用支援事業のスキーム及び認定・認可の手続の流れ(1)-p.3)
スキーム2:民間VC等がGPとなるファンドに大学が出資する流れ
スキーム2は、民間VC等がGPとなるファンドに、国立大学法人等がLP出資する流れです。こちらは規制緩和により、令和4年4月1日から可能になりました。(特定研究成果活用支援事業のスキーム及び認定・認可の手続の流れ(2)-p.4)
手続きの流れは次のとおりです。(特定研究成果活用支援事業のスキーム及び認定・認可の手続の流れ(2)-p.4)
- VCが、ファンドに係る特定研究成果活用支援事業に関する計画を文部科学大臣・経済産業大臣に提出する
- 両大臣がその計画を認定する
- 国立大学法人等が、VCの組成したファンドへの出資に係る出資認可申請書を文部科学大臣に提出する
- 文部科学大臣が、財務大臣と協議の上で認可する
- その後、大学がファンドにLP出資する(特定研究成果活用支援事業のスキーム及び認定・認可の手続の流れ(2)-p.4)
スキーム1との大きな違いは、大学VCを介さず、民間VC等がGPとして運用するファンドに大学が出資できる点です。ただし、ここでも事業計画の認定と、大学側の出資認可は必要です。(特定研究成果活用支援事業のスキーム及び認定・認可の手続の流れ(2)-p.4)
GPとLPの関係
資料では、ファンドの役割分担としてGPとLPが使われています。
- GP(General Partner)
ファンドの運用に責任を負う無限責任組合員 - LP(Limited Partner)
ファンドの出資者となる有限責任組合員(特定研究成果活用支援事業のスキーム及び認定・認可の手続の流れ(1)-p.3)
大学がLPとして出資する場合、運用主体はGPであり、大学は出資者として関与します。この役割分担を押さえると、スキーム1・2の違いが理解しやすくなります。(特定研究成果活用支援事業のスキーム及び認定・認可の手続の流れ(1)-p.3)
この制度が大学発ベンチャー支援にどうつながるか
この制度の意義は、大学の研究成果を活用するベンチャー企業等に対して、大学が資金面・人的面・技術面で支援できる道を開くことです。単なる投資制度ではなく、助言や技術的援助まで含めて支援できる点に特徴があります。(特定研究成果活用支援事業の趣旨-p.2)
その結果、大学の研究成果を基盤にした事業化を制度面から後押しできます。大学発ベンチャー支援や研究成果の社会実装を進めるうえで、実務上の土台となる制度だといえます。(特定研究成果活用支援事業の趣旨-p.2)
まとめ
特定研究成果活用支援事業は、国立大学法人等の技術に関する研究成果を活用するベンチャー企業やファンドを支援するための制度です。認定を受けた事業者に対して、大学が出資や人的・技術的援助を行えるようにすることで、研究成果の社会実装を進める仕組みになっています。(特定研究成果活用支援事業の趣旨-p.2)
押さえるべきポイントは次の3つです。
- 対象は、大学の「技術に関する研究成果」を活用する事業
- 事業計画には、文部科学大臣・経済産業大臣の認定が必要
- 大学が出資する際は、都度、文部科学大臣の出資認可が必要(特定研究成果活用支援事業の趣旨-p.2)
あわせて、スキーム1では大学VCを設立してファンドを組成する流れ、スキーム2では民間VC等がGPとなるファンドに大学が出資する流れがあり、スキーム2は令和4年4月1日から可能になっています。(特定研究成果活用支援事業のスキーム及び認定・認可の手続の流れ(2)-p.4 大学発ベンチャー支援や研究成果の事業化を検討する際は、まず「認定」と「認可」の違いを理解することが出発点になります。
参考資料:特定研究成果活用支援事業とは

