スマホでかんたん貸出管理
カシカン
無料から使える貸出管理サービス「カシカン」の使い方を紹介しています。
カシカンの利用・登録はこちらから。
気候危機に挑む日本の科学、研究から実務へ

気候危機に挑む日本の科学、研究から実務へ

はじめに

気候変動は、もはや「将来の課題」ではありません。世界平均気温は上昇を続け、2024年には工業化以前比で+1.55℃という記録的な値が観測されました。日本でも、猛暑・大雨・大雪などの影響が、年々よりはっきりと現れています。(今後の気候変動研究及び地球環境データ連携基盤-p.1)
こうした状況を受け、文部科学省の「今後の気候変動研究及び地球環境データ連携基盤の在り方等に関する有識者会議」は、気候変動研究と地球環境データ連携基盤を一体で見直し、研究成果を実務にもっとつなげるべきだという方向性を中間まとめとして示しました。(今後の気候変動研究及び地球環境データ連携基盤の在り方等に関する有識者会議-p.2)
本資料のキーワードは、「研究から実務へ」。その加速装置として位置づけられているのが、AIとデータ基盤です。(1.はじめに-p.3)
この記事では、この中間まとめをもとに、何が課題で、今後どんな方向に進もうとしているのかを整理します。

日本の気候変動は、すでに実務課題になっている

中間まとめはまず、気候変動が地球規模の危機であると同時に、日本でも深刻化している問題だと位置づけています。日本の年平均気温は1898〜2025年の間に100年当たり1.44℃上昇しており、真夏日・猛暑日・熱帯夜の増加や冬日の減少、極端な大雨の増加が明確に観測されています。(世界及び日本の気候変動の現状-p.4)
また、近年国内で起きた猛暑、大雨、大雪のいくつかについては、イベント・アトリビューション研究により、地球温暖化の影響で発生確率が高まっていたことなども示されています。つまり、気候変動は研究テーマであるだけでなく、防災、治水、農業、金融、企業経営に直結する実務課題になっているということです。(気候変動の現状と課題-p.4)

日本は約25年かけて、気候科学とデータ基盤を積み上げてきた

文部科学省は2002年から約25年にわたり気候変動研究を推進してきました。 その中で、気候モデルの開発や気候予測情報の創出、高精度化・高解像度化を進め、IPCCや国内の適応策に貢献してきました。(1.はじめに-p.3)
中間まとめが挙げている主な成果は、次の通りです。

1. 気候メカニズムの解明

2. 最新の気候モデル開発

3. 炭素循環予測

4. アンサンブル気候予測データ

5. イベント・アトリビューション

6. 研究成果の質

つまり、日本の気候科学は、基礎研究・モデル開発・データ創出・国際貢献の面で相当な蓄積を持っています。

しかし、現場が求めるのは「研究成果」だけではない

中間まとめが強調しているのは、研究成果がすでに実務に使われ始めている一方で、現場ニーズがさらに多様化しているという点です。(国内の多様な主体による気候変動適応策への貢献とニーズの増大-p.7)

国土交通分野

治水計画や海岸保全では、d4PDFなどの気候予測データが実務に活用されています。ただし、現状では気候予測の精度やバイアス補正に課題があるため、将来の降水量をそのまま使うのではなく、変化倍率を用いる段階にとどまっている面があります。(国土交通省-p.8)
今後は、
  • 近未来の影響評価
  • 港湾における複合災害リスクの把握
  • より局所的な影響評価
  • 常時波浪などの評価
    といった、より詳細な情報が求められています。(国土交通省-p.8)

農林水産分野

農業現場では、1km解像度にメッシュ化された気象観測データ・気候予測データをもとにしたデータシステムが使われています。排水施設の設計でも、過去の気象観測データと将来の降雨予測が活用されています。(農林水産省-p.8)
今後は、
  • 地域ごとに分割された気候予測データ
  • 時間連続的な気候予測データ
  • 可視化機能
    が期待されています。(農林水産省-p.8)

気象庁

気象庁は「日本の気候変動 2025」や「気候予測データセット2022」を通じて、観測結果と将来予測を整理・発信してきました。今後は、10年先・30年先といった近未来の予測や、AIを使った高解像度化、バイアス補正を含む利用技術の革新が求められています。(気象庁-p.8)

環境省

環境省は気候変動影響評価報告書や適応計画を通じ、政策立案や地方公共団体・事業者の適応策を支えています。ここでも、科学的知見そのものに加えて、アクセスのしやすさ、利便性、使いやすさが重視されています。(環境省-p.9)

企業

金融・保険業界では、d4PDFを活用したリスク定量化が進んでいます。
今後は、
  • グローバルなサプライチェーン全体のリスク評価
  • 気候リスク管理から防災までをつなぐ予測データ
  • 不確実性情報
  • 経済影響の予測データ
    など、意思決定に直結する情報が求められています。(企業等-p.9)

共通して求められているのは「時間」「空間」「実装性」の3つ

中間まとめは、国内のニーズを大きく3つに整理しています。(主な共通ニーズ-p.9)

1. 時間スケールの多様化

  • 数年〜数十年先の近未来予測
  • 季節予報の高度化

2. 空間解像度の高度化

  • 数km〜市町村レベルの高解像度データ

3. アウトプットの社会実装性

  • 単なるデータ提供ではなく、政策立案や事業計画に直接使える情報や支援ツール
ここから見えてくるのは、求められているのは「データそのもの」ではなく、意思決定に使える形へ変換された情報だということです。(主な共通ニーズ-p.9)

AIは気候科学を変える可能性を持つが、課題も大きい

中間まとめが大きく紙幅を割いているのが、AIの活用です。AI for Science は、研究の速度や範囲を飛躍的に広げる可能性を持ち、気候分野でもその波が来ています。(④AIの活用による科学研究のゲームチェンジの可能性-p.10)
海外では、AI気象モデルや地球観測データの統合モデルなどが進んでおり、気候科学でもAIによる高速化・統合解析・政策直結型の予測が進みつつあります。(④AIの活用による科学研究のゲームチェンジの可能性-p.10)
日本でも、すでに一部では
ただし、中間まとめはAI導入を手放しで楽観していません。課題として挙げられているのは、次のような点です。
つまり、AIを使えば何でもよいわけではなく、物理モデルを土台にしながらAIを組み込む必要がある、という立場です。(④AIの活用による科学研究のゲームチェンジの可能性-p.11)

計算資源も、CPU中心から見直しが必要になっている

AIと高解像度モデルの両方を扱うには、計算資源の問題が避けられません。中間まとめでは、従来のCPU中心のスーパーコンピューターだけでは対応が難しくなりつつあるとし、GPUを含む計算基盤の必要性を指摘しています。(⑤AI・数値計算等のための計算資源確保の必要性-p.11)
ここで重要なのは、単に新しい計算機を導入するという話ではなく、

DIASは中核基盤だが、研究用途中心の設計を超える必要がある

地球環境データの連携基盤として中間まとめが中核に置くのが DIAS です。DIASには、気象観測衛星データ、気候予測データ、水文データ、レーダーデータ、河川ライブカメラ画像など、300を超えるデータセットが蓄積されており、100ペタバイト級のストレージを持ちます。利用者も1.5万人以上に広がっています。(国内外の多様なデータ基盤の現状-p.12)
一方で、中間まとめが問題視しているのは、DIASを含む多くの基盤が研究用途を前提に構築されてきたことです。
そのため、行政や産業界が必要とする
  • 検索性
  • 可視化
  • バイアス補正済みデータ
  • 直感的な利用方法
  • サポート体制
が十分とはいえません。(基盤間の連携に係る現状と課題-p.13)
また、基盤ごとにデータ形式やAPIが異なり、複数基盤を横断して使いにくいことも課題です。国内にはDIAS以外にも、A-PLAT、JAXAの衛星データプラットフォーム、JAMSTECの海洋データ基盤、国立極地研究所のADSなどがありますが、それぞれが別々に整備されてきたため、ワンパッケージでの利用が難しいという構造があります。(国内外の多様なデータ基盤の現状-p.12)

目指すのは「研究用データ公開」から「研究・社会実装基盤」への進化

中間まとめが示す将来像は明確です。それは、地球環境データ基盤を単なる研究用の保管庫ではなく、研究と社会実装をつなぐ基盤へ進化させることです。(データの研究基盤から、「研究・社会実装基盤」への拡大-p.22)
そのための方向性として挙げられているのが、次のような取り組みです。

基盤間連携の強化

利便性の向上

AIの活用

  • データのAI-Ready化
  • GPU等の計算基盤強化
  • AIエージェントの創出
  • 検索・可視化・情報提供の自動化(AIの活用-p.26)

安全かつ持続可能な運用

人材育成

データバリューチェーンを強くするには、人がつなぐ役割も必要

中間まとめは、データの流れをデータバリューチェーンとして捉えています。観測・研究 → 統合・解析 → 評価・価値化 → 利活用 → フィードバック、という循環をうまく回す必要があるという考え方です。((4)データバリューチェーンに関する現状と課題-p.14)
ここで重要になるのが、情報仲介人材の存在です。研究者が作った情報と、行政や企業の意思決定の間にはギャップがあります。そのギャップを埋めるには、気候科学・データサイエンス・AI解析を横断的に理解し、両者をつなげる人材が必要です。(②情報仲介人材等の不足や、利用者のリテラシー向上の必要性-p.14)
また、利用者側がデータを正しく使うためには、モデルの限界やバイアス、前提条件などの情報もあわせて提供する必要があります。
つまり、データを出すだけではなく、使える形にして、限界も含めて伝えることが重要だと整理されています。(など、予測精度の限界に関する情報も合わせて示し、利用者が十分な情報の下で意思決定が-p.16)

国内外との連携が、今後の実装力を左右する

国内では、関連4省庁の連携や、文部科学省と気象庁の連携が重要とされています。また、「気候変動リスク産官学連携ネットワーク」や「気候変動関連データの活用と適応に関する実践パネル」などを通じて、企業や金融機関との対話を進めることも求められています。(③省庁や企業等のニーズを把握する必要性の拡大-p.14)
国際的には、IPCC、GEO、Copernicus、Destination Earth、Horizon Europe、米国のGenesis Missionなどとの連携が挙げられています。((4)国内外との連携の強化-p.27) 日本の強みは、気候科学とデータ基盤の蓄積、そして国際的な研究貢献にあります。今後はそれを、グローバルサウスを含む海外展開や技術移転にもつなげていく考えです。(②国際連携-p.28)

まとめ

この中間まとめが一貫して伝えているのは、気候変動への対応は、研究だけでも、データ基盤だけでも完結しないということです。(3.今後の方向性-p.15)
必要なのは、
  • 先端的な気候研究の強化
  • DIASを中心としたデータ連携基盤の進化
  • AIとGPUを含む計算基盤の整備
  • 行政・企業・地域が使える形への実装
  • 人材育成と国内外連携
を一体で進めることです。((1)全体像-p.15)
言い換えれば、日本の気候変動対策は今、「研究成果を出す段階」から「研究成果を使いこなす段階」へ移ろうとしています。その転換を支えるのが、AIとデータ基盤です。(データの研究基盤から、「研究・社会実装基盤」への拡大-p.22)
中間まとめは、そのための設計図を示したものだといえるでしょう。
参考資料:今後の気候変動研究及び地球環境データ連携基盤の在り方等に関する有識者会議 中間まとめ

カシカンの使い方

スマホでかんたん貸出管理
カシカン
無料から使える貸出管理サービス「カシカン」の使い方を紹介しています。
カシカンの利用・登録はこちらから。
利用者インタビュー過去のエントリーよくある質問更新情報
YouTube Logo
Copyright © byus&co.,ltd. All right reserved.