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特別支援学校の学校図書館を「学び」と「居場所」に変える3ステップ

特別支援学校の学校図書館を「学び」と「居場所」に変える3ステップ

はじめに

学校図書館は、本を借りたり、静かに読書したりするだけの場所ではありません。調べ学習や探究活動で資料を使い、授業で得た情報を深める場所でもあります。子供が自分に合った方法で本や情報に触れたり、友達や教員と過ごしたりする場にもなります。(学びの深化を担う学校図書館-p.2)
文部科学省の資料「多様な子供たちの読書と学びを育む学校図書館へ」では、特別支援学校の学校図書館を整備・活用するための3ステップが示されています。(学びの深化を担う学校図書館-p.2)
  1. 意識を変え、体制をつくる
  2. 空間と蔵書を充実させ、活用につなげる
  3. 学校図書館をもっと宣伝する
まず人と仕組みを整え、次に資料と空間を整備し、最後に利用を広げる。この記事では、この3ステップを具体的に紹介します。

学校図書館は教育課程を支える場所

学校図書館は、学校図書館法に基づき設置される、学校教育に欠かせない設備です。(学びの深化を担う学校図書館-p.2)
文部科学省は、これからの学校図書館について、読書活動だけでなく、次のような役割を示しています。(学びの深化を担う学校図書館-p.2)
  • 調べ学習や探究活動の場になる
  • 新聞など多様なメディアを活用した学習を支える
  • 各教科等の授業で資料を提供する
  • 言語活動を充実させる
  • 主体的・対話的で深い学びに向けた授業改善に貢献する
特別支援学校では、こうした役割に加え、子供一人一人の教育的ニーズや読みやすさに応じた環境づくりが重要です。
例えば、音声と画像を組み合わせた資料、点字図書、文字を拡大した資料などが考えられます。大切なのは、すべての子供に同じ本や同じ読み方を求めることではありません。
「読みたい」「知りたい」と思ったときに、自分に合った方法で資料に出会えることが重要です。

特別支援学校では整備に課題がある

文部科学省の資料では、令和2年度「学校図書館の現状に関する調査」をもとに、特別支援学校の整備状況が紹介されています。(学びの深化を担う学校図書館-p.2)
学校図書館図書標準を達成している学校の割合について、資料では、特別支援学校の小学部・中学部が一般の小学校・中学校より低い水準にあることが示されています。
ただし、記事で数値を掲載する際には、次の点を確認する必要があります。
  • 3.6%、15.5%が小学部・中学部のどちらに対応するか
  • 61.1%、71.2%がどの指標を示しているか
  • 「司書教諭・学校司書を配置」の定義は何か
  • 調査の対象と集計方法は何か
数値は、原典のグラフと凡例を確認したうえで掲載しましょう。調査年度の異なる数値を、現在の状況として扱わないことも大切です。
整備を進める際は、本の冊数だけでなく、運営を担う人員、校内の連携、利用しやすい環境を一体的に考える必要があります。

Step1 意識を変え、体制をつくる

最初のステップは、学校図書館を学校経営と教育課程の中に位置付けることです。(Step1-p.3)

校長が学校図書館の方針を示す

学校経営計画の中に、学校図書館の活用が位置付けられているでしょうか。
学校図書館を一部の担当者だけが運営するのではなく、学校全体の教育活動と結び付けることが重要です。各教科等の授業や日常の学習、読書活動でどのように図書館を活用するのか、計画を立てて進めます。
校長は、学校図書館の館長として、図書館の活用方針を示し、校内の取り組みを進める役割を担います。

司書教諭が授業と学校図書館をつなぐ

司書教諭は、教員が学校図書館を活用した授業を円滑に行えるよう、学校司書と連携して支援します。
例えば、次のような活動が考えられます。
  • 授業のテーマに合った資料を探す
  • 調べ学習に必要な本や新聞を準備する
  • 教員の教材研究を支援する
  • 学校図書館の年間活用計画を作成する
司書教諭だけでなく、担任や各教科の教員とも連携することで、学校図書館を授業で活用しやすくなります。

学校司書が資料と利用を支える

学校司書は、学校図書館の運営や資料の提供を支える職員です。主な役割には、次のようなものがあります。(Step1-p.3)
  • 各教科等に必要な資料を整備する
  • 子供や教員に資料を提供する
  • 必要な本や情報を探す支援を行う
  • 読み聞かせやお話の活動を行う
  • レファレンスに対応する
特別支援学校では、子供の読みやすさや興味の違いを踏まえながら、資料や環境を整えることが求められます。
鳥取大学附属特別支援学校では、司書教諭と学校司書の連携により、多様な障害の特性に対応した使いやすい構造や、教員の教材研究を支えるレファレンスの定着が目指されています。(Step1-p.3)
広島県立広島中央特別支援学校では、学校司書の配置を生かし、点字図書の整備や、書架の高さ・配置の工夫が進められています。(Step1-p.3)

年間計画に位置付ける

学校図書館の活用を一時的な取り組みにしないためには、年間計画に位置付けることも有効です。
鳥取県では、「とっとり学校図書館活用教育推進ビジョン」を作成し、各学校が学校図書館の活用を年間計画に位置付けています。身に付けたい力を明確にしながら、教育活動の中で図書館を活用する考え方です。(Step1-p.3)
本を購入する前に、誰が図書館を運営し、どの授業や活動で活用するのかを決める。これがStep1のポイントです。

Step2 空間と蔵書を充実させ、活用につなげる

体制を整えたら、次は子供の「読みたい」「知りたい」に応える資料と空間を整えます。(Step2-p.4)

新しい本と多様な資料を揃える

子供から「学校図書館の本が古い」「読みたい本はもう読んでしまった」と言われることがあります。
読みやすい本や興味を持つ本は、子供によって異なります。そのため、蔵書を整備するときは、さまざまな読み方や関心に対応できる資料を組み合わせることが大切です。(Step2-p.4)
例えば、次のような資料が考えられます。
  • 絵本や物語
  • 写真やイラストが多い本
  • マンガ
  • 新聞
  • 点字図書
  • LLブック
  • マルチメディアDAISY図書
  • 電子図書
  • 読書補助具
マンガや写真、イラストを使った本は、文章の理解を助けたり、読書への入り口になったりします。新聞の記事を拾い読みすることも、本や情報に触れる方法の一つです。
すべてを一度に揃える必要はありません。子供の反応や利用状況を見ながら、必要な資料を段階的に加えていくことが現実的です。

地域の図書館と連携する

蔵書を充実させる方法は、購入だけではありません。
公共図書館や点字図書館から資料を借りることもできます。地域の図書館と連携することで、自校だけでは揃えにくい資料を用意したり、子供の興味や関心に合った本を探したりできます。(Step2-p.4)
連携を始める際は、学校側の担当者を決め、地域の図書館の学校支援窓口などに相談するとよいでしょう。子供たちが関心を持っているテーマや、必要な資料の種類を伝えることで、選書や貸出につながりやすくなります。
貸出条件や利用できる資料は、自治体や図書館によって異なります。具体的な方法は、各窓口に確認してください。

読みやすさを支える資料を取り入れる

文部科学省の「学校図書館ガイドライン」では、子供一人一人の教育的ニーズに応じた図書館資料の充実が求められています。(文部科学省総合教育政策局地域学習推進課-p.8)

マルチメディアDAISY図書

マルチメディアDAISY図書は、音声とともに文字や画像を表示できるデジタル図書です。(マルチメディアDAISY(デイジー)図書-p.6)
主な特徴には、次のようなものがあります。
  • 読み上げている箇所を色で示すハイライト機能
  • 文字の大きさの調整
  • 音声速度の変更
  • 文字や背景の色の変更
  • 音声を聞きながら文字や画像を確認できる機能
通常の書籍を読むことが難しい人にとって、読み方の選択肢を広げる資料の一つです。(マルチメディアDAISY(デイジー)図書-p.6)

LLブック

LLブックは、誰もが読書を楽しめるように工夫された「やさしく読みやすい本」です。
文章や構成を分かりやすくする工夫が施されており、知的障害のある人や、一般的な文章の理解に難しさがある人などにも活用されています。

リーディングトラッカー

リーディングトラッカーは、読みたい行に視点を集中しやすくする読書補助具です。
学習障害や視覚障害のある人の読書を支えるほか、文章を読む際に集中したい人にも役立ちます。
資料を選ぶときは、障害の種類だけで固定的に考えるのではなく、次のような点を確認しましょう。
  • 文字の量
  • 写真やイラストの有無
  • 音声対応の有無
  • 文字の大きさや色
  • 内容の難易度
  • 本人の興味や関心
  • 使う端末や補助具との相性
一人一人に合った資料を組み合わせることが、読書や学習の入り口を広げます。

「そこにいたい」と思える空間をつくる

学校図書館は、本を読むためだけの場所ではありません。
安全を確保しながら、共用スペースや教室内にも本を置けば、子供が身近に資料と出会える環境をつくれます。(Step2-p.4)
また、ソファなどを置き、読書だけでなく、友達や学校司書との会話を楽しめるようにすることも考えられます。
愛知県立岡崎聾学校では、新聞コーナーの隣にソファを置き、ゆっくり読める環境が整えられています。資料を読むだけでなく、下校前に友達と過ごしたり、図書館の職員と会話したりする場としても活用されています。(Step2-p.4)
空間を整える際は、次の点を確認するとよいでしょう。
  • 書架の高さは子供に合っているか
  • 本を選びやすい配置になっているか
  • 安全に移動できる動線があるか
  • 新着本やおすすめの本が見つけやすいか
  • 静かに過ごせる場所があるか
  • 本を読む以外の過ごし方も認められているか
新しい本を見やすい場所に展示することも、利用のきっかけになります。

Step3 学校図書館をもっと宣伝する

学校図書館を整備しても、その存在や利用方法が知られていなければ、十分に活用されません。(Step3-p.5)
普段利用しない子供や教員にも、「学校図書館はどのような場所か」を伝えることが必要です。

学校図書館だよりを発行する

学校図書館だよりを定期的に発行すると、新しい本や図書館の活動を知らせることができます。(Step3-p.5)
紹介する内容には、次のようなものがあります。
  • 新着本
  • 季節や行事に関する本
  • 授業で使える資料
  • バリアフリー資料
  • 図書館でできること
  • 子供たちのおすすめ本
鳥取大学附属特別支援学校では、学校図書館だよりでバリアフリー図書を紹介し、読書の親しみやすさや楽しさを伝える工夫が行われています。(Step3-p.5)

廊下や掲示物で知らせる

新着本やおすすめの本を、子供や教員が普段通る廊下に掲示する方法もあります。(Step3-p.5)
図書館の中だけで情報を発信するのではなく、日常の動線上に本との接点をつくることがポイントです。

図書委員や子供同士の口コミを生かす

図書委員と一緒に広報することも重要です。(Step3-p.5)
子供が選んだおすすめ本を紹介したり、掲示物を一緒につくったりすることで、子供同士の口コミが生まれます。
広報の効果は、貸出冊数だけで判断する必要はありません。
  • 新しく利用する子供が増えたか
  • バリアフリー資料が利用されたか
  • 授業での利用が増えたか
  • 教員からの資料相談が増えたか
  • 図書館で安心して過ごす子供の姿が見られたか
利用者数だけでなく、学習や居場所としての活用にも目を向けることが大切です。

教育委員会と地域による支援

特別支援学校の学校図書館を継続的に整備するには、学校だけでなく、教育委員会や自治体による支援が欠かせません。(文部科学省総合教育政策局地域学習推進課-p.8)
文部科学省の資料では、教育委員会に対して、次のような取り組みが求められています。(文部科学省総合教育政策局地域学習推進課-p.8)
  • 司書教諭の発令と学校司書の配置を促す
  • 学校図書館に関する研修を定期的に行う
  • 多様な蔵書を整備するための予算措置を講じる
  • 地域の図書館や点字図書館との連携を進める
  • 読書バリアフリー計画に、特別支援学校図書館の充実を位置付ける
  • 子ども読書活動推進計画に、特別支援学校図書館の充実を位置付ける
学校図書館は、次の3つの機能を持つ場として整えることが重要です。(学びの深化を担う学校図書館-p.2)
  • 読書センター
  • 学習センター
  • 情報センター
そこに、子供が安心して本や情報に触れ、人と関わることのできる「居場所」としての機能も加わります。
なお、マルチメディアDAISY図書、サピエ図書館、国立国会図書館の「視覚障害者等用データ送信サービス」などは、サービスごとに登録資格や利用条件が異なります。(学校図書館等における読書バリアフリーコンソーシアム-p.7)
学校で活用する場合は、学校所在地の公共図書館、点字図書館、教育委員会などに、利用方法や必要な機器を確認してください。

まとめ

特別支援学校の学校図書館を充実させることは、単に本の冊数を増やすことではありません。
子供一人一人が「読みたい」「知りたい」と思ったときに、自分に合った方法で本や情報に出会える環境を整えることです。読書や学習だけでなく、友達や教員と過ごし、安心して過ごせる場をつくることでもあります。
文部科学省が示す3ステップは、次のとおりです。(学びの深化を担う学校図書館-p.2)
  1. 意識を変え、体制をつくる
    校長が学校経営計画に学校図書館を位置付け、司書教諭と学校司書が連携する。
  2. 空間と蔵書を充実させ、活用につなげる
    新しい本や多様なバリアフリー資料を揃え、子供が使いやすく過ごしやすい空間を整える。
  3. 学校図書館をもっと宣伝する
    学校図書館だよりや展示、図書委員の活動を通じて、図書館の役割や魅力を伝える。
まずは、学校経営計画への位置付け、担当者同士の連携、新しい本の展示など、できるところから始められます。
学校、教育委員会、公共図書館、点字図書館が連携しながら、子供たちの読書と学びを支える学校図書館を育てていくことが重要です。(文部科学省総合教育政策局地域学習推進課-p.8)

参考資料

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