兵庫県神戸市にある「なだのはま小学校市民図書室」。
神戸市立灘の浜小学校と同じ敷地にありながらも、建物自体は別の部屋を使って運営するという、神戸市が取り組む「学校施設開放事業」の施設としては変わったかたちの市民図書室に伺い、普段の業務や人々とのふれあい、カシカンでの運用について聞いてきました。
なだのはま小学校市民図書室の概要
鵜飼
本日はよろしくお願いいたします。
今回インタビューを初めて直接現地で行わせていただき、
お時間とっていただきありがとうございます。
図書
こちらこそよろしくお願いいたします。
今日は土曜日なので、このあと利用者さんが
実際に来られると思いますね。
鵜飼
なるほど。
まず、なだのはま市民図書室について伺いたいのですが。
図書
灘の浜小学校が2021年に新設されたのですが、
1年後になだのはま小学校市民図書室が開設されました。
それ以前は小学校の図書室の一画を使っていましたが、
ここは新設の学校ということで、
市民図書室専用のスペースを設けることができました。
鵜飼
学校の図書館とはまた別の建物なんですね。
図書
以前は学校の図書室の一区画だったため、
それぞれの本が混ざったり、子どもの利用が多く、
地域の方が利用しにくいという問題がありました。
現在はインターホンや管理が学校とは別になったので、
運営がしやすくなり、利用者層も変化しました。
小さなお子さん連れや高齢者の方々からは、
市立図書館より近くて便利だと好評をいただいています。
鵜飼
なるほど。
地域の方が多く利用されているのは面白いですね。
蔵書のラインナップも変えてるんでしょうか?
図書
そうですね。
話題作などでもここでは比較的早めに借りられるので、
喜ばれる利用者も多いです。
また、スタッフの中に本の紹介やPOP作りが得意な方が
いて、選書にもアドバイスをもらっています。
鵜飼
確かに。本のピックアップや並べ方が図書館というより
本屋さんのような雰囲気で印象的です。
大人向けには小説が多いようですね。
図書
子ども向けには「サバイバル」シリーズや図鑑、
幼児向けには読み聞かせ用の絵本、
大人が読んでも楽しめる絵本などに分けています。
小さな子どもを連れたお母さんが椅子に座って
読み聞かせをされている姿もよく見かけます。
他にも中学生がよく利用していますね。
子どもたちが読みかけの本をこっそり隠したり、
時には変なところに手紙が挟まっていたりして、
本の整理の際も面白いですね。
鵜飼
本の並べ方も、表紙を前に出して面で向けたりとか、
目線を意識した工夫がされていますよね。
図書
通常の図書館のように細かい分類が難しいので、
主に「知る」中心と「読む」中心で分類しています。
低学年向け、高学年向け、大人向けなど、
対象をラベルの色分けでわかりやすくしています。
大量の蔵書をカシカンで管理
鵜飼
運営管理面では貸出管理システムの存在は重要ですか?
図書
非常に重要ですね。
現在、約4700冊の蔵書がありますが、
この量を手作業のみで管理するのは大変ですね。
鵜飼
その量をひとつひとつアナログで管理するというのは、
確かに想像すると頭を抱えますね。
図書
そうなんです。
なので、カシカンの機能である、
書籍データの自動取得を蔵書の登録に利用していますね。
現在でも、新たに入荷した書籍を登録するときや、
利用者ナンバーを管理するためにもカシカンを使います。
鵜飼
利用者の登録に関しては、
「学校施設開放運営委員会」の決まりがあるので、
個人情報をweb上で管理できないという点もあり、
利用者自身が用紙に記入という形式なんですね。
図書
はい。
そこからカシカンで登録した利用者ナンバーと紐づけ、
発行したQRコードを利用者カードに添付するという、
すこしイレギュラーな使い方ではありますが。
鵜飼
なるほど。
webの管理とアナログの管理とを併用する形なんですね。
図書
そうです。
現状では柔軟にアナログとデジタルを使い分け、
可能な範囲でスムーズに対応していますね。
神戸市が取り組む市民図書室について
鵜飼
神戸市ではこういった「市民図書室」という
取り組みが盛んなんですか?
図書
はい、市立図書館が遠い地域を中心に、
このような形態の市民図書室の設置が進んでいるんです。
生涯学習の一環として、教育委員会が所管しています。
運営自体は学校開放という別枠で予算がついており、
独自の仕組みになっていますね。
鵜飼
なるほど、これは私が住んでいる地域ではあまり馴染みが
ない仕組みなので、非常に興味深いです。
図書
神戸市独自の取り組みだと思います。
私自身も途中から市民図書室の運営に誘われて
参加しているかたちです。
※学校施設開放事業
神戸市教育委員会による取り組み。
各市民図書室は、地域の団体の代表等で構成される
「学校施設開放運営委員会」によって運営されている。
地域のつながりを生むイベントの発信
鵜飼
現在、スタッフは何名ほどいらっしゃるんでしょうか?
図書
高校生のボランティアも含めて全部で11〜12人で、
シフト制になっています。
イベントがある際はイベント専属のスタッフも
お手伝いしてくれます。
子どもの対応など工夫して取り組んでいますね。
鵜飼
本棚のPOPは子どもさんが書かれたものもありますね。
図書
そうなんです。
常連のお子さんが一生懸命書いてくれたりしています。
季節のイベント用のプレゼントや景品なども、
ボランティアスタッフが手作りしたりしています。
お正月にはおみくじを引いてもらい、
オリジナルの景品をプレゼントしたりと、
小さな遊び心を加えています。
鵜飼
つい先日もイベントをされたと聞きましたが。
図書
はい、5月11日に開催しました。
イベント時には普段図書室の裏にある
スペースを使って工夫しています。
普段、小さな子ども向けにスタンプカードを配布して、
スタンプが15個貯まったらオリジナルのグッズを
プレゼントしているのですが、
このグッズの作成費などは、
お祭りのイベント収益を充てていますね。
高齢の利用者さんがスタッフとの交流に訪れるなど、
地域コミュニティの拠点にもなっていますね。
鵜飼
ありがとうございます。
大変参考になるお話を聞かせていただきました。
今回のインタビューでは、いわゆる図書館とは異なるかたちで、本をきっかけとした人々の交流について学ぶ機会を得ることができました。また、神戸市の取り組みについても知ることができ、さまざまな地域でも活かせるヒントを得られたことに感謝しています。さらに、カシカンの導入によって、蔵書管理というコストのかかる業務を効率的に運用できる事例を改めて知ることができましたので、今後もサービスの発信をより一層進めてまいります。