調査で見えた、若者の生活課題
若者の悩みというと、結婚や仕事、収入を思い浮かべる人も多いかもしれません。
しかし、こども家庭庁の「若者10万人の総合調査(ウェブアンケート調査・途中経過)」では、日常的な困りごととして、見た目への不満、人を信頼する難しさ、恋愛や人づきあいの難しさ、将来の見通しなどが上位に挙がりました。(若者10万人の総合調査-p.1)
この調査は、若い世代の状況や課題を把握し、今後の若者施策に生かすことを目的としています。調査対象は、令和8年4月1日時点で満15~39歳の人です。(若者10万人の総合調査(ウェブアンケート調査・途中経過)-p.2)
調査期間は令和8年5月20日から8月5日までですが、今回の資料では、7月23日までに回答があった人を途中経過として集計しています。7月23日までの回答者は101,950人で、このうち有効回答は67,905人でした。(若者10万人の総合調査(ウェブアンケート調査・途中経過)-p.2)
ただし、有効回答者の性別は女性が62.2%、男性が35.6%で、女性の割合が高くなっています。年齢階級でも、35~39歳が32.3%で最も多く、20~24歳は11.9%でした。(若者10万人の総合調査(ウェブアンケート調査・途中経過)-p.3)
そのため、以下では「日本の若者全体の実態」と断定せず、今回の有効回答者にみられた傾向として紹介します。
見た目、恋愛、人への信頼が上位に
普段感じている困りごとでは、自分自身に関する悩みと、人間関係に関する悩みが上位に並びました。(若者10万人の総合調査(ウェブアンケート調査・途中経過)-p.11)
主な項目は次のとおりです。
- 自分の見た目、容姿・体型が気に入らない:56.7%
- 人と恋愛関係になることが難しい:56.3%
- 人を信頼することが難しい:55.5%
- 自分が何をしたいのか、どのような人間なのか自分でよくわからない:54.2%
- 将来の仕事・キャリアの見通しが持てない:51.7%
- 人に助けを求めることができない:51.7%
- 人づきあいがうまくいかない:50.5%(若者10万人の総合調査(ウェブアンケート調査・途中経過)-p.11)
これらは、一見すると本人の自信や性格に関する悩みにも見えます。しかし、調査結果からは、将来への不安や見た目への不満が、人間関係、恋愛、他者からの評価、困ったときに助けを求められるかどうかと結びついている状況もうかがえます。
人づきあい、恋愛、人への信頼に関する困りごとは、既婚者より未婚者で多くみられました。また、容姿や体型への不満は女性で高く、特に未婚女性で目立っています。(若者10万人の総合調査(ウェブアンケート調査・途中経過)-p.12)
未婚の30代では生活満足度が低く、孤独感が高い
生活満足度や自己肯定感、孤独・孤立感については、全体として未婚者より既婚者の方が良好な傾向がみられました。(若者10万人の総合調査(ウェブアンケート調査・途中経過)-p.4)
特に、未婚の30代で特徴が表れています。生活満足度の平均点は、未婚男性では15~19歳の6.70点から、35~39歳の4.62点へ低下しました。未婚女性でも、15~19歳の6.58点から35~39歳の4.77点へ低下しています。(若者10万人の総合調査(ウェブアンケート調査・途中経過)-p.4)
35~39歳で「孤独であると感じる」と回答した割合は、未婚男性で71.2%、未婚女性で74.4%でした。(若者10万人の総合調査(ウェブアンケート調査・途中経過)-p.4)
ただし、この結果だけから「未婚であることが孤独の原因」とは言えません。住まい、収入、仕事、相談相手の有無、地域との関わりなど、複数の条件が関係している可能性があります。
実際、未婚の30代では、「事情があって今の家から出て暮らせない」と回答した割合も高く、未婚男性では30~34歳37.5%、35~39歳39.3%、未婚女性では30~34歳37.7%、35~39歳43.4%でした。(若者10万人の総合調査(ウェブアンケート調査・途中経過)-p.13)
孤独・孤立感の高さと住まいや生活上の困りごとが、同じ層でみられている点は重要です。
結婚のハードルは経済面、自由時間、相手との出会い
結婚意欲については、未婚者の回答が分かれました。(若者10万人の総合調査(ウェブアンケート調査・途中経過)-p.8)
- すぐにでも結婚したい:9.5%
- 2~3年以内に結婚したい:10.3%
- 5年以内に結婚したい:7.7%
- いずれは結婚したい:37.5%
- 結婚するつもりはない:35.1%
「いずれは結婚したい」と答えた人がいる一方、「結婚するつもりはない」と答えた人も35.1%いました。(若者10万人の総合調査(ウェブアンケート調査・途中経過)-p.8)
結婚意欲や結婚のハードルの集計は、離別・死別を含まない未婚者が対象です。回答者属性における「未婚(離死別を含む)」とは定義が異なるため、注意が必要です。(若者10万人の総合調査(ウェブアンケート調査・途中経過)-p.8, 若者10万人の総合調査(ウェブアンケート調査・途中経過)-p.4)
結婚のハードルとして多かったのは、次の項目です。(若者10万人の総合調査(ウェブアンケート調査・途中経過)-p.8)
- 安定した結婚生活を送れる収入への不安:40.0%
- 自由な時間がなくなる・趣味時間が短くなる:34.4%
- 結婚したいと思える人がいない:32.6%
- 結婚のための住居や住居資金の不足:30.3%
- こどもを持つかどうかの価値観の違い:30.1%
- 家事や子育て分担の偏り:27.0%
経済的不安だけでなく、自由時間、住居、子育てや家事の分担、結婚相手との出会いなど、結婚後の生活を含む幅広い要素がハードルになっています。
女性では、20代前半までは「家事や子育て分担の偏り」が比較的高く、年齢階級が上がるほど「結婚したいと思える人がいない」が高くなる傾向がみられました。(若者10万人の総合調査(ウェブアンケート調査・途中経過)-p.9)
また、「結婚するつもりはない」と回答した人に限ってみると、「結婚したいとは思わない」と答えた人は約半数でした。未婚であることや、結婚するつもりがないことだけでは、結婚に対する関心や迷いの有無までは判断できません。(若者10万人の総合調査(ウェブアンケート調査・途中経過)-p.10)
結婚よりも優先される余暇・趣味
結婚より優先されるものとして、男女・年齢階級を問わず高かったのが「余暇・趣味を楽しむこと」です。(若者10万人の総合調査(ウェブアンケート調査・途中経過)-p.8)
未婚者全体では約5割、「結婚するつもりはない」と答えた人では59.4%が、結婚より余暇や趣味を優先すると回答しました。(若者10万人の総合調査(ウェブアンケート調査・途中経過)-p.8, 若者10万人の総合調査(ウェブアンケート調査・途中経過)-p.10)
そのほかにも、次のような項目が挙がっています。(若者10万人の総合調査(ウェブアンケート調査・途中経過)-p.8)
- 自分の体調や精神的な余裕
- 安定した収入・仕事の確保や維持
- 将来への経済的な備え
- 家族との関わり
- 友人・知人とのつながり
- 仕事での昇進・転職・スキルアップ
これらの結果は、結婚に関心がないというよりも、現在の生活、自由な時間、心身の余裕、将来への備えを重視している人が多いことを示している可能性があります。
住まい、時間、お金の困りごとは立場によって異なる
住居や生活の余裕についても、未婚者と既婚者で異なる傾向がみられました。(若者10万人の総合調査(ウェブアンケート調査・途中経過)-p.13, 若者10万人の総合調査(ウェブアンケート調査・途中経過)-p.14)
既婚者では、家賃や住宅ローンなどの「住居の金銭的負担が大きい」と感じる人が、未婚者より多くなっています。
一方、30代の未婚者では、「住宅の環境がよくない(狭い、古いなど)」と感じる人が既婚者より多くみられました。
また、自由に使える時間が十分にないという回答は、男女とも未婚者より既婚者で多くなっています。家族構成や仕事、子育てなど、さまざまな生活条件が関係している可能性があります。
未婚者では、年齢階級が高くなるほど、住居への不満、日々の食費への苦慮、余暇の未充足が増える傾向も示されました。(若者10万人の総合調査(ウェブアンケート調査・途中経過)-p.14)
婚姻状況によって、困りごとの種類が異なる点が特徴です。既婚者では住宅費や時間の不足、未婚の30代では住宅環境や居場所、生活上の経済的な余裕が課題として表れています。
若者が求めるのは、お金の情報と人とのつながり
「もっと知りたいこと」では、資産形成、新NISA、税金、年金、社会保険などの情報に加え、学びやキャリアに関する情報への関心がみられました。(若者10万人の総合調査(ウェブアンケート調査・途中経過)-p.15)
また、次のような人とのつながりに関する情報も挙がっています。
- 恋愛や人との関わり方で困ったときに役立つ情報
- 自由な時間に親しく過ごせる人を見つける方法
人とのつながりに関する情報を知りたいという回答は、年齢階級が低いほど多くみられました。(若者10万人の総合調査(ウェブアンケート調査・途中経過)-p.15)
若者向けの情報提供では、資産形成や社会保障、キャリアだけでなく、恋愛、人間関係、孤独、居場所に関するニーズも考える必要があります。
相談先がないことと、支援制度を知らないこと
困ったときの相談先・情報入手先・頼り先としては、家族、友人・知人、専門家や行政などのサービス機関が上位に挙がりました。(若者10万人の総合調査(ウェブアンケート調査・途中経過)-p.16)
一方で、場面によっては「誰もいない・相談できない・言えない」という回答もみられます。相談相手がいない割合は、年齢階級が高いほど高く、既婚者より未婚者で多い傾向が示されました。(若者10万人の総合調査(ウェブアンケート調査・途中経過)-p.17)
未婚男性35~39歳では、次の場面で「誰もいない・相談できない・言えない」と回答した割合が高くなっています。
- ライフコースに迷ったとき:44.3%
- 地域や社会との関わり方が分からないとき:47.0%(若者10万人の総合調査(ウェブアンケート調査・途中経過)-p.17)
未婚女性35~39歳でも、それぞれ40.0%、44.8%でした。(若者10万人の総合調査(ウェブアンケート調査・途中経過)-p.17)
また、家族との関係で悩んだり落ち込んだりしたとき、生成AIサービスを相談先・情報入手先・頼り先の一つとして選んだ人は約1割でした。相談手段が多様化していることがうかがえます。(若者10万人の総合調査(ウェブアンケート調査・途中経過)-p.16)
行政サービスについては、「どのようなものがあるのか、よくわからない」が77.5%に上りました。「どのような行政の支援が利用できるかを知りたい」は74.6%です。(若者10万人の総合調査(ウェブアンケート調査・途中経過)-p.19)
一方で、行政サービスについては、次のような回答もありました。
- 問題解決や解決の手がかりを得られると思う:57.3%
- 利用を面倒だと感じる:70.5%
- 利用を恥ずかしいと感じる:43.7%
- 行政が困りごとを積極的に察知して支援することは問題ないと思う:68.7%(若者10万人の総合調査(ウェブアンケート調査・途中経過)-p.19)
支援制度が存在していても、制度を知らなかったり、利用の手続きや相談に心理的な負担を感じたりすれば、支援にはつながりにくくなります。制度の有無だけでなく、情報の届き方や相談のしやすさも課題として浮かび上がっています。
ヤングケアラー、社会的養護、メンタルヘルス
家族の中に、自分がお世話をしている、または過去にしていた人がいると回答した割合は15.5%でした。(若者10万人の総合調査(ウェブアンケート調査・途中経過)-p.21)
- 現在いる:6.8%
- 現在はいないが、過去にいた:8.7%(若者10万人の総合調査(ウェブアンケート調査・途中経過)-p.21)
お世話の相手は、祖母が32.9%で最も多く、次いで母29.5%、父20.3%、祖父19.7%、きょうだい13.6%でした。この設問は複数回答のため、合計は100%を超える場合があります。(若者10万人の総合調査(ウェブアンケート調査・途中経過)-p.21, 若者10万人の総合調査(ウェブアンケート調査・途中経過)-p.22)
家族のお世話をしている、またはしていた人のうち、自分がヤングケアラーに当てはまる、または当てはまっていたと回答した割合は31.8%でした。(若者10万人の総合調査(ウェブアンケート調査・途中経過)-p.21)
15.5%は回答者全体を分母とした割合、31.8%は家族のお世話をしている・していた人を分母とした割合です。分母が異なるため、両者を単純に比較することはできません。
ヤングケアラーは、全体と比べて30代に多くみられました。また、生活満足度はやや低く、孤独・孤立を感じる割合はやや高くなっています。一方、自己肯定感などは、全体と大きく異なる傾向ではありませんでした。(若者10万人の総合調査(ウェブアンケート調査・途中経過)-p.22, 若者10万人の総合調査(ウェブアンケート調査・途中経過)-p.23)
社会的養護等での生活経験については、里親家庭・ファミリーホーム・特別養子縁組家庭が1.6%、児童養護施設などの施設が2.5%、シェルターが1.9%でした。これらは設問上、複数の経験を選べるため、合計して「経験者の割合」とすることはできません。(若者10万人の総合調査(ウェブアンケート調査・途中経過)-p.24)
メンタルヘルスについては、PHQ-9を用いて、ここ2週間の状態を「なし」から「重度」までの5段階で集計しています。PHQ-9は心身の状態を確認するための尺度であり、医師による診断そのものではありません。資料では、重度の割合は未婚者より既婚者で低い傾向が示されています。(若者10万人の総合調査(ウェブアンケート調査・途中経過)-p.25)
SNSは情報収集やつながりの場である一方、不安もある
SNSについては、利便性とリスクの両方が示されました。(若者10万人の総合調査(ウェブアンケート調査・途中経過)-p.26)
「関心のある情報を入手できる」と回答した人は、男女・年齢階級を問わず6割を超えています。若い年代ほど、SNSが人とのつながりや勉強、仕事、キャリア形成に役立つと感じる傾向もみられました。(若者10万人の総合調査(ウェブアンケート調査・途中経過)-p.26)
一方で、SNSについては次のような不安も挙がっています。
- 情報が偏っている
- 使い過ぎて、ほかの大切なことをする時間がなくなる
- 投稿を見て自分の状況と比較し、落ち込むことがある
- 嘘の情報でも気づかず信じてしまう
- 詐欺や闇バイトなどの被害に遭う(若者10万人の総合調査(ウェブアンケート調査・途中経過)-p.26)
SNSの利用制限については、男女・年齢階級を問わず5割以上が肯定的でした。女性の方が肯定的な傾向がある一方、規制の対象になりやすい年代ほど肯定感は低くなっています。(若者10万人の総合調査(ウェブアンケート調査・途中経過)-p.26)
また、SNSの使い方について家庭だけでなく社会全体でルールを作るべきだという意見は約半数で、意見が分かれました。(若者10万人の総合調査(ウェブアンケート調査・途中経過)-p.26)
SNSを一括して危険なもの、または便利なものと決めつけるのではなく、情報収集やつながりの場である一方、情報の偏りや使い過ぎ、比較による落ち込みも生じる媒体として捉える必要があります。
家庭・学校・職場・地域で意見を表明できているか
社会参加に関する調査では、家庭で「自分の日々の過ごし方や将来について、自分で決めることができている」と回答した割合は、おおむね6割でした。(若者10万人の総合調査(ウェブアンケート調査・途中経過)-p.20)
「意思決定に参加できている」「自分の意見が尊重されている」と感じる人は、半数前後です。(若者10万人の総合調査(ウェブアンケート調査・途中経過)-p.20)
学校では、15~19歳を中心に、「意思決定に参加できている」「意見が尊重されている」と感じる割合と、「自分の意見が思いつかない」「からかわれるのが不安」「誰かに代弁してほしい」と感じる割合が、同程度となりました。(若者10万人の総合調査(ウェブアンケート調査・途中経過)-p.20)
職場では、意思決定への参加や意見の尊重を感じる割合は3割前後でした。(若者10万人の総合調査(ウェブアンケート調査・途中経過)-p.20)
地域では、「あてはまるものはない」という回答が最多でした。地域との関わりが少ないため、意見を表明したり意思決定に参加したりする機会そのものが限られている可能性があります。(若者10万人の総合調査(ウェブアンケート調査・途中経過)-p.20)
まとめ
こども家庭庁の「若者10万人の総合調査」の途中経過からは、若者の課題が結婚や仕事、収入だけに限られないことが見えてきました。(若者10万人の総合調査-p.1)
今回の有効回答者では、次のような傾向が示されています。
- 見た目、恋愛、人への信頼、将来、人づきあいなどの悩みが上位にある
- 未婚の30代では、生活満足度が低く、孤独・孤立感が高い傾向がある
- 結婚のハードルには、経済的不安、自由時間の減少、相手との出会い、住居費などがある
- 結婚よりも余暇や趣味、心身の余裕を優先する人が多い
- 既婚者では住宅費や時間の不足、未婚の30代では住宅環境や居場所が課題になっている
- 支援制度については、「何があるのか分からない」という認知の問題が大きい
- 家族のお世話をしている、またはしていた人が一定数おり、ヤングケアラーでは生活満足度や孤独感に特徴がみられる
- SNSは情報収集やつながりに役立つ一方、情報の偏りや比較による落ち込みなどの不安もある
ただし、この調査は途中経過です。女性や35~39歳の回答者が多いなど、回答者の構成には偏りがあります。また、未婚者と既婚者の違いについても、婚姻状況だけが原因とは言えません。
今後は、年齢別・地域別の詳細分析や、若者支援団体との情報収集が進められ、年度末に最終報告書として取りまとめられる予定です。(若者10万人の総合調査(ウェブアンケート調査・途中経過)-p.2)
若者の困りごとは、結婚、仕事、収入だけでなく、見た目、人間関係、孤独、住まい、相談先の不足にも広がっています。必要な人が自ら制度を探しに行くことを前提にするだけでなく、情報や相談先が届きやすい仕組みをどうつくるか。今回の途中経過は、その課題を考えるための基礎資料といえます。
※出典:こども家庭庁「若者10万人の総合調査(ウェブアンケート調査・途中経過)」
※記事公開前に、資料の正式な公表日、最終報告書の公開状況、調査方法・ウェイト処理の有無を確認してください。
※記事公開前に、資料の正式な公表日、最終報告書の公開状況、調査方法・ウェイト処理の有無を確認してください。

