待機児童は増えた一方、申込者数と利用児童数は減少
こども家庭庁は、令和8年4月1日時点の保育所等の定員、利用児童数、待機児童数を取りまとめました(保育所等関連状況取りまとめ(令和8年4月1日)-p.1)。
今回の調査では、全国の保育の申込者数や利用児童数が前年より減少した一方、待機児童数は181人増加しました。
全国全体で見ると、申込者数で見る保育ニーズは減少傾向にあります。しかし、都市部など一部の地域では、低年齢児への需要集中や保育士不足、住宅開発・転入による地域偏在などにより、待機児童が増えています。
一方、人口減少が進む地域では、待機児童の多さではなく、利用児童数の減少による保育施設や保育機能の維持が課題となっています(地域ごとの保育所等利用状況について-p.18)。
※本記事の数値は、こども家庭庁「保育所等関連状況取りまとめ(令和8年4月1日)」に基づきます。熊本県内の自治体データが未確定のため、各種数値は暫定値であり、今後修正される可能性があります。
令和8年の保育所等の状況
| 項目 | 令和8年4月1日時点 | 前年比 |
| 保育所等利用定員 | 301万6,417人 | 1万2,865人減 |
| 保育所等の利用児童数 | 264万6,756人 | 3万1,661人減 |
| 保育所等の数 | 4万46か所 | 71か所増 |
| 定員充足率 | 87.7% | 0.7ポイント低下 |
利用定員は前年比0.4%減、利用児童数は1.2%減でした。施設数は71か所増えたものの、定員と利用児童数はいずれも減少しています。
定員充足率は、利用児童数を利用定員で割った数値です。令和7年の88.4%から0.7ポイント低下し、令和4年の89.7%からは2.0ポイント低下しました(保育所等における都道府県別の定員充足率(5ヶ年)-p.17)。
ただし、定員充足率は4月1日時点の値です。年度途中の入所に備えて空きを確保している施設もあるため、この数値だけで施設の運営状況や保育の質を判断することはできません。
待機児童は2,435人、前年から181人増加
令和8年4月1日時点の待機児童数は2,435人でした。前年の2,254人から181人増加し、これまで続いていた減少傾向から増加に転じました(○ 令和8年4月1日時点の待機児童数は2,435人(対前年+181人)。-p.6)。
一方、長期的に見ると待機児童数は大きく減っています。ピークだった平成29年は2万6,081人で、令和8年はその10分の1以下です(○ 令和8年4月1日時点の待機児童数は2,435人(対前年+181人)。-p.6)。
| 年度 | 待機児童数 |
| 平成29年 | 2万6,081人 |
| 令和4年 | 2,944人 |
| 令和5年 | 2,680人 |
| 令和6年 | 2,567人 |
| 令和7年 | 2,254人 |
| 令和8年 | 2,435人 |
待機児童がいる市区町村は189自治体で、前年から22自治体減りました。全国1,741市区町村のうち、1,552自治体、89.1%では待機児童が0人です(1~49人-p.5)。
一方、待機児童数が50人以上の自治体は8自治体あり、そのうち100人以上の自治体は3自治体でした(1~49人-p.5)。
待機児童の96%は3歳未満児
待機児童は年齢によって大きく偏っています(保育所等待機児童数等の状況①-p.7)。
| 年齢区分 | 待機児童数 | 全体に占める割合 |
| 0歳児 | 220人 | 9.0% |
| 1・2歳児 | 2,117人 | 86.9% |
| 3歳以上児 | 98人 | 4.0% |
| 合計 | 2,435人 | 100% |
3歳未満児は2,337人で、待機児童全体の96.0%を占めました。なかでも1・2歳児だけで2,117人に上り、全体の86.9%を占めています。
待機児童はすべての年齢層に一様に生じているのではなく、低年齢児に集中していることが分かります。低年齢児の受け入れ枠や、必要な保育士を確保できるかどうかが、待機児童数に影響しているとみられます。
待機児童の75.5%は都市部に集中
こども家庭庁の区分によると、都市部の待機児童数は1,838人で、全国の75.5%を占めました。待機児童率は、都市部が0.10%、その他の道県が0.06%です(【表5】都市部とそれ以外の地域の待機児童数-p.10、【表6】都市部とそれ以外の地域の待機児童率-p.10)。
待機児童数が多い自治体は次のとおりです(<待機児童数の多い上位10地方自治体>-p.8)。
| 自治体 | 待機児童数 |
| 東京都世田谷区 | 166人 |
| 東京都足立区 | 106人 |
| 東京都北区 | 103人 |
| 東京都町田市 | 90人 |
| 東京都江戸川区 | 75人 |
| 兵庫県西宮市 | 75人 |
| 奈良県橿原市 | 56人 |
| 兵庫県明石市 | 54人 |
| 東京都大田区 | 48人 |
| 東京都立川市 | 45人 |
都市部では、共働き世帯や共働きを希望する世帯の増加、育児休業を予定より早く切り上げて復職する人の増加、子育て世帯の転入などが申込者数の増加要因として挙げられています(待機児童の多い上位10自治体等の状況(R8調査結果)-p.13)。
また、マンションや宅地の開発による人口流入、特定の地域や施設への申込み集中など、地域内の需要の偏りも指摘されています(待機児童の多い上位10自治体等の状況(R8調査結果)-p.13)。
ここでいう「都市部」は、一般的な意味での都市地域とは異なります。埼玉・千葉・東京・神奈川、京都・大阪・兵庫の7都府県にある指定都市・中核市を含む地域と、その他の指定都市・中核市を対象とする、こども家庭庁独自の区分です(【表5】都市部とそれ以外の地域の待機児童数-p.10)。
待機児童が解消できない主な要因
待機児童がいる自治体への調査では、次のような要因が挙げられました(待機児童を解消できなかった要因-p.12)。
- 申込者数が想定以上に増加した
- 計画していた利用定員数が不足した
- 保育人材の確保が難しかった
- 特定の地域や施設に保育需要が偏った
- 保育士不足により、定員どおりの受け入れができなかった
- 保育士の離職や短時間勤務希望の増加により、保育体制の確保が難しくなった
- 新規施設の整備が遅れた
- 土地・建物・事業者の調整が進まず、施設整備が計画どおりに進まなかった
- 加配が必要なこどもや外国籍のこどもの増加により、定員の維持・拡大が難しくなった
東京都内の自治体では、共働き世帯の増加や早期の育児休業切り上げ、子育て世帯の転入などが申込者数の増加要因として挙げられました(待機児童の多い上位10自治体等の状況(R8調査結果)-p.13)。
自治体からは、住宅開発や地価・家賃の高騰、子育て支援策による転入増加などが影響した可能性も指摘されています。ただし、これらは地域ごとの事情であり、全国共通の要因とは限りません(待機児童の多い上位10自治体等の状況(R8調査結果)-p.13)。
施設の定員が制度上確保されていても、保育士を配置できなければ、定員どおりに受け入れられない場合があります。待機児童対策では、施設数や定員数だけでなく、保育人材の確保も重要です。
申込者数で見る保育ニーズは減少傾向
令和8年4月1日時点の保育の申込者数は272万9,681人で、前年から3万5,554人減少しました。申込者数は令和2年をピークに減少しています(【保育の申込者数の状況】-p.21)。
背景には、就学前人口の減少があります。
一方で、保育の利用に影響する女性の就業率や共働き世帯の割合は上昇しています。
- 25~44歳女性の就業率:83.6%
- 共働き世帯の割合:79.7%
女性の就業率は前年から1.7ポイント、共働き世帯の割合は2.4ポイント上昇しました(保育所等利用児童数等の状況③-p.4)。
このことから、全国の申込者数は就学前人口の減少などにより減っているものの、地域によっては就業率の上昇や人口流入によって保育需要が高まる可能性があります。
保育の申込者数は、人口だけでなく、就業率、育児休業の取得状況、転入者数、住宅開発、施設の立地や希望の集中など、複数の要素によって変化します。
人口減少地域では保育機能の維持が課題に
都市部で待機児童が課題となる一方、人口減少地域では定員充足率が低下しています(地域ごとの保育所等利用状況について-p.18)。
| 地域区分 | 定員充足率 | 待機児童数 |
| 都市部 | 90.9% | 1,818人 |
| 過疎地域 | 72.7% | 0人 |
過疎地域の定員充足率は、令和3年の81.3%から令和8年には72.7%へ低下しました。5年間で8.6ポイントの低下です(地域ごとの保育所等利用状況について-p.18)。
過疎地域では待機児童がいない一方、利用児童数の減少によって、施設の安定的な運営や地域の保育機能の維持が難しくなる可能性があります。
今後は、施設を増やすだけでなく、地域の実情に応じて次のような対応が検討されます。
- 保育施設の統廃合
- 定員や施設規模の縮小
- 一時預かりや子育て支援などを含む多機能化
- 法人間の連携
- 必要に応じた合併・事業譲渡
ただし、定員充足率の低下は、すぐに施設の廃止や統廃合を意味するものではありません。年度途中の入所に備えて空きを確保している施設もあるため、地域の人口動態や施設の配置、送迎の負担などを含めて判断する必要があります。
「待機児童ゼロ」は希望する園に入れたという意味ではない
待機児童数は、保育所等の利用申込者数から、実際に保育所等を利用している児童数と、一定の条件に該当する「除外4類型」を差し引いて算出されます((参考)保育所等利用待機児童数調査における除外4類型について-p.15)。
| 類型 | 概要 |
| 特定の保育所等のみ希望している者 | 通園可能な他の保育所等の情報提供を受け、保護者の意向を確認したうえで、特定の園のみを希望している場合 |
| 求職活動を休止している者 | 求職活動を行っておらず、保育の必要性が確認できない場合 |
| 育児休業中の者 | 入園できた場合に復職する意思が確認できない場合 |
| 地方単独保育施策を利用している者 | 国の定義に該当する自治体独自の保育施策を利用している場合 |
除外の可否は一律に決まるものではなく、国の定義に基づき、自治体が状況を確認して判断します((参考)保育所等利用待機児童数調査における除外4類型について-p.15)。
そのため、「待機児童ゼロ」は、国の定義に基づく待機児童がゼロという意味です。すべての保護者が第一希望の園に入れたことや、希望する条件の施設を利用できたことを意味するとは限りません。
令和11年に向け、申込者数の減少と定員の微増を見込む
自治体が作成した「保育提供体制の確保のための実施計画」の集計では、令和7年から令和11年にかけて、次の見通しが示されています(「保育提供体制の確保のための実施計画」集計結果(令和8年4月1日時点)-p.19)。
- 申込者数:276万5,224人から267万572人へ減少
- 利用定員数:318万7,464人から319万87人へ増加
- 申込者数:約9万5,000人減少
- 利用定員数:約3,000人分増加
計画上は、令和9年以降の待機児童数を0人としています(「保育提供体制の確保のための実施計画」集計結果(令和8年4月1日時点)-p.19)。
ただし、これは各自治体の計画・見込みを集計したものです。将来の実績を保証するものではありません。女性の就業率、住宅開発、子育て世帯の転入、地域ごとの申込みの偏りなどによって、実際の保育需要は変動する可能性があります。
国は「量の拡大」から持続可能な保育提供体制へ
こども家庭庁は、令和7年度から令和10年度末を見据えた「保育政策の新たな方向性」を示しています。政策は、次の3つの柱を軸に進められます(保育政策の新たな方向性-p.22)。
- 地域のニーズに対応した質の高い保育の確保・充実
- すべてのこどもの育ちと子育て家庭を支援する取組
- 保育人材の確保やテクノロジー活用による業務改善
待機児童対策では、次のような取組が示されています(○待機児童問題を早期に解消する-p.23、地域の課題に対応した財政支援-p.25)。
- 自治体の実施計画に基づく施設整備
- 整備費・改修費に対する国庫補助
- 入園予約制など、年度途中の入所を支える仕組み
- 入所先が決まるまでの緊急的な預かり
- 待機児童が多い自治体へのヒアリングや助言
- 保育士の確保と業務負担軽減
- 待機児童対策協議会による広域利用調整
- 保育DXやテクノロジーの活用
人口減少地域に対しては、多機能化や統廃合にかかる整備・改修費への支援、定員と利用児童数の乖離に対応した公定価格の見直し、保育所の合併・事業譲渡に向けた環境整備などが進められます(○人口減少に対する自治体の計画的な取組を国が支援する体制の構築-p.24)。
なお、補助率の引き上げなどの財政支援には、実施計画の採択など別途要件があります(地域の課題に対応した財政支援-p.25)。
まとめ
令和8年4月1日時点の待機児童数は2,435人で、前年から181人増加しました。長期的には平成29年のピークから大きく減少しているものの、今回、減少傾向から増加に転じています。
一方、申込者数で見る保育ニーズは減少し、定員充足率も87.7%まで低下しました。
今回の調査から見える課題は、全国一律ではありません。
- 都市部では、低年齢児を中心に待機児童が発生
- 保育士不足や地域偏在によって、定員どおりに受け入れられない場合がある
- 人口減少地域では、定員充足率の低下が保育機能の維持に影響
- 今後は、施設整備だけでなく統廃合、規模縮小、多機能化なども検討される
全国平均の数字だけでなく、自治体ごとの人口動態、年齢別の需要、保育士の確保状況、施設の配置を確認することが重要です。

